本研究は、微生物の二次代謝産物由来の各種生物活性ペプチドの効率的合成法を確立するとともに、抗腫瘍活性ペプチドの構造活性相関研究を通して生物活性や生体膜透過性に求められるペプチドの性質を理解することを目的としている。平成26年度は、汎用性の高いN-メチルアミノ酸含有ペプチドの合成法の確立に向けた検討と抗腫瘍活性ペプチド誘導体の生物活性の評価を行った。 [ペプチド性二次代謝産物の新規合成法の開発]平成25年度までに確立した合成プロセスでは、N-メチル化反応中に保護できるアミノ酸に制限があった。このため、合成可能なペプチドの適用範囲の拡大を目的として、利用可能なアミド保護基を精査し、新たに酸化処理により脱保護可能な保護基が利用可能であることを明らかにした。ペプチド鎖構築におけるカップリング効率の向上や一部適用できない側鎖官能基があるものの、今後の各種反応条件の最適化により多くのペプチド性天然物の合成に利用可能であることが示唆された。 [抗腫瘍活性ペプチドの合成と生物活性評価]平成25年度までに化学合成を検討したcoibamide A誘導体について、共同研究により生成物の構造解析を進めたところ、分岐部分のアミノ酸の立体化学が異なるエピマーであることが判明した。このエピマーはこれまでに報告された合成品にない強力な細胞増殖抑制活性を示したことから、標的分子探索等の機能評価研究に活用可能である。また、新たに環状構造を有するペプチド性天然物に含まれる複数の不斉中心を有する脂肪酸部分の立体化学の決定に向けて、その合成研究に着手した。
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