研究課題/領域番号 |
24659005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤岡 弘道 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10173410)
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キーワード | in situ保護基 / エノン / ケトン / 反応制御 / 選択的還元 / Decytospolide A / Decytospolide B |
研究概要 |
我々は前年度の本研究で、ホスホニウム塩をin situ保護基として利用して、種々のカルボニル官能基(アルデヒド、ケトン、エステル、アミド)の反応性の逆転に成功した。 今年度はこのホスホニウム塩をin situ保護基として利用する反応を用い、求核付加反応に対し、ほぼ同等の反応性を示すエノンとケトンの反応性の制御を検討した。 すなわち、エノンとケトン共存下にR3SiOTf-PPh3を反応させると、PPh3がエノン選択的に1,4-付加反応を起こし、ホスホニウムシリルエノールエーテルを形成することを見出した。その際、ケトンはPPh3と反応せず残っているので、還元剤を加えるとケトン選択的に還元反応が起こり、ついで後処理(塩基処理)で、ホスホニウムシリルエノールエーテルをエノンにすることにより、one-potでエノン存在下にケトン選択的に還元することに成功した。本法は他のカルボニル官能基にも有効で、エノン存在下にエステルやアミドの選択的に還元することもできた。またエノン選択的な1,4-付加反応が、エノンβ位の置換様式により異なることを利用し、β位モノ置換エノン存在下にβ位ジ置換エノンを選択的に1,2-還元することに成功した。また本年度の研究で見出したエノン存在下でのケトン選択的還元反応を用い、THP環を有する天然物であるDecytospolide A および B の短工程での不斉全合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホスホニウム塩がin situ保護基として働くことを利用し、これまであまり良い方法がなかった同様の反応性を示す2つの官能基(エノンとケトンまたはその類縁官能基)の反応性の制御による選択的還元反応に成功した。またエノンの置換様式による選択的還元反応に成功するというこれまでにない反応を見出した。また見出した反応を利用して、天然物の全合成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究過程で、選択的還元反応のみならず、アルキル求核種の導入にも成功したので、その反応の一般化とその応用についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
β‐一置換エノンからはホスホニウムシリルエーテルを生成できるが、β‐二置換エノンからはホスホニウムシリルエーテルが生成しないことを平成25年10月に見出した。この興味深い知見は、全体の計画に新規性を加えるために、優先して検討し、β‐一置換エノン存在下にβ‐二置換エノンを選択的に変換するという今までにない反応を開発したが、そのために当初の計画に遅延が生じた。 平成25年度に実施できなかった実験に要する経費として500,000円を、またデータ分析・まとめに要する経費としてが100,000円を使用する。
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