研究課題/領域番号 |
24659015
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
輿石 一郎 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (20170235)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 位置情報 / Proximity Ligation Assay |
研究概要 |
オリゴDNA結合ヒアルロン酸プローブ(牛軟骨由来)およびオリゴDNA結合シアル酸結合レクチンを用い、各々、磁性ビーズに結合させたヒアルロン酸、Jurkat細胞膜上のタンパク結合シアル酸の検出を行った。いずれも数値化の可能性が認められ、磁性ビーズ上ヒアルロン酸では、濃度依存的な検出が可能であった。細胞膜上には、DNA鎖同様陰イオン性ポリマーである各種グリコサミノグリカンが存在することが予想される。グリコサミノグリカンによるProximity Ligation Assay法への影響を評価するため、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸、過硫酸化コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸およびヘパリンのリアルタイムPCR検出への影響を検討した。その結果、ヘパリンおよび過度に硫酸化されたコンドロイチン硫酸(2糖あたり硫酸エステル基2個以上)がリアルタイムPCR検出を妨害した。この結果より、本法は、ヘパリン含有肥満細胞や過硫酸化コンドロイチン硫酸含有マクロファージへの応用は困難なものの、標的細胞を上皮系の細胞とすることで、内因性グリコサミノグリカンの影響を受けることなく評価が可能であることが明らかとなった。さらに、2種類のオリゴDNAを溶離液中でProximity Ligation Assay法に供したところ、ある増幅回数を超えるとコントロール値の上昇が認められた。この結果は、わずかではあるが、2種類のオリゴDNA鎖がコネクターDNAによりLigationを受けることが明らかとなった。この結果より、基質に接着した細胞を本法に供する際、Ligationに先立ち、遊離のオリゴDNAを洗浄除去することが望まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究の最終目標は、細胞膜上における脂質ラフトの形成を数量的解析することである。平成24年度はこの目標達成のための基盤研究を実施することであった。Proximity Ligation Assay法は、タンパク質の定量的評価を目的として、エピトープを異にする2種類のオリゴDNA結合抗体を用いる手法として開発された経緯を有する。これに対し、本課題研究では、タンパク質を認識する抗体の代わりに糖鎖を認識するレクチン様プローブを用い、細胞膜表層糖鎖を定量的評価することが可能であるか否かを明らかにすることを目的としている。本年度は、特に、磁性ビーズに分子量が10kDaから2000kDaと広範囲にわたるヒアルロン酸を固層化したモデル系を調製し、ヒアルロン酸結合プローブを用いたProximity Ligation Assay法の問題点について検討を試みた。その結果、内因性物質による妨害の可能性、より高感度化のための操作法の改良等が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、ヒト大腸粘膜上皮樹立細胞株であるCaco-2細胞を用い、細胞膜上脂質ラフト形成の数値化を試みる。プローブとしては、糖脂質GM1に対し特異的に結合するコレラトキシンBユニットを用いる。また、カベオラとの分別識別を目的としてスフィンゴミエリンに対して特異的に結合するライセニンを用いる。 我々は、Caco-2細胞が消化管粘膜上皮細胞のM細胞と類似して高分子物質輸送系(Transcytosis)を有していることを明らかにするとともに、この輸送系は細胞膜一電子還元系により調節されている可能性を見出した(未発表データ)。この現象における脂質ラフトの関わりについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度未使用額としておよそ20万円を平成25年度に繰り越した。研究計画では、コレラトキシンBユニットのみをプローブとして用いる予定であったが、さらに、ライセニンをプローブとして追加することとした。ライセニンは500μgで20万円(和光純薬工業)と高価であるため、この繰越額と合わせて平成25年度の研究計画を遂行する。
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