研究課題/領域番号 |
24659016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松崎 勝巳 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00201773)
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研究分担者 |
矢野 義明 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60402799)
星野 大 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70304053)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 膜蛋白質 / 可溶化剤 |
研究実績の概要 |
高分解能NMR に適した小さいサイズの脂質-膜タンパク質ナノディスクの創成を目指して、リン脂質をベースにした新規可溶化剤のデザイン・合成を行った。フォスファチジルコリンの2 本のアシル鎖のうち1 本をポリエチレングリコール(PEG)で置換した分子(PEG-PC)の合成を行い、膜貫通ヘリックス(AALALAA)3を可溶化できるか検討した。可溶化剤/ペプチド混合物を凍結乾燥後水和し、一時間後、膜貫通ヘリックスに標識したCy5蛍光を測定したが、 PEG-PCをペプチドの3200倍加えた場合も蛍光強度がプラトーに到達せず、原料のlyso-PCより可溶化能が低いことがわかった。そこで次にPEG部分をコール酸に置き換えた化合物(Cholic-PC)を合成した、この可溶化剤も(AALALAA)3に対する可溶化能は高くなかった。そこで、7回膜貫通型のバクテリオロドプシン(bR)に対する可溶化能および構造保持力を、レチナール部位の吸収を利用して検討した。Lyso-PCの他に、界面活性剤Triton-X100, DDM, CHAPSとの比較を行った。可溶化能はTritonX-100 > DDM = Lyso-PC = Cholic-PC >> CHAPSであった。またCholic-PC中では40℃程度までbRの構造が保たれる一方、Lyso-PC, TritonX-100, DDM中では35℃またはそれ以下の温度で変性が始まることから、Cholic-PC中に可溶化したbRは高い熱安定性を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標の一つは、膜タンパク質を安定に可溶化させる可溶化剤を見出すことであった。フォスファチジルコリンの2 本のアシル鎖のうち1 本をコール酸に置き換えることで、バクテリオロドプシンを安定に可溶化できる可溶化剤が実現可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主な目標は、NMR測定に適した小さい可溶化体を得ることである。可溶化剤―バクテリオロドプシン複合体のサイズを調べるため、蛍光標識したバクテリオロドプシンのFCS測定を行う。また、PCのアシル鎖部位は現在18:1のものを使用しているが、他の鎖長でより良い性質が見られる可溶化剤があるか検討する。サイズが小さい可溶化体が見つかれば、バクテリオロドプシンを安定同位体標識し、溶液NMRによる測定を試みる。
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次年度使用額の使用計画 |
リゾリン脂質等合成関連試薬、蛍光標識試薬、NMR用安定同位体培地、タンパク質精製関連試薬等に用いる、またバクテリオロドプシン遺伝子を委託合成する。さらに、タンパク質や可溶化剤の構造や配向に関する情報を得るため、フーリエ変換赤外分光光度計を購入する。
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