研究課題/領域番号 |
24659017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石濱 泰 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30439244)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロテオーム / 分析科学 / 蛋白質 / 血清プロテオーム |
研究概要 |
in vitroリン酸化反応とその後のリン酸化ペプチド濃縮により、タンパク質混合物試料中のタンパク質組成を自由に操作し、低発現量タンパク質の検出感度を向上させる新規手法を開発し、血清・血漿プロテオミクスに応用することを目的とし、以下の検討を行った。まず、HeLa細胞を用いた検討により、目的に合致したプロファイルを持つキナーゼのスクリーニングを行い、9種のキナーゼに絞り込んだ。これらにつき、in vitroリン酸化反応の最適化を行い、リン酸化率を最大化させる条件を見出した。ヒト標準血清試料を用い、本法による人工リン酸化血清プロテオームと対照試料である血清プロテオーム解析をショットガンプロテオミクスの手法を用いて行ったところ、それぞれ408タンパク質、392タンパク質が同定され、そのオーバーラップは232タンパク質であった。各々のプロテオームにおける発現量分布を比較したところ、人工リン酸化血清プロテオームの中心値の低発現量側へのシフトが認められ、本法が低発現量タンパク質の検出感度の向上に有効であることが示された。しかしながら、血清中に含まれるアルブミン等の高発現タンパク質による同定効率の明らかな低下も同時に観測された。この影響を低減させるため、高発現血清タンパク6種に対する抗体を固定化した除去カラムによる試料前処理を検討した。その結果、アルブミン由来のペプチドはほぼ完全に除去され、今まで未同定であった数多くのタンパク質の同定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本法の根幹となる「人工リン酸化プロテオミクスを用いることにより低発現タンパク質の同定が向上する」ことについて、もっとも濃度ダイナミックレンジが広く、また高発現タンパク質トップ20が95%以上占めている最も難しいプロテオミクス試料である血清で、これを証明できたことが大きな進展であった。得られた結果はまだまだ満足のいくものではないが、高発現タンパク除去カラムと併用することにより、更に同定・検出能力を深化させることが可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
6種の高発現タンパク除去カラムが有効であったので、20種の高発現タンパク除去カラムについて検討する。また内在性糖鎖について酵素処理による除去の効果を検証する。また、ターゲットを絞ったLC-MSMSによる定量法(SRM, SWATH, SIM等)についても検討する。最適化した方法について分析法バリデーションを実施し、実試料分析におえる実用性についても検討する。また、血清以外の培養細胞試料についても、本法の有効性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(LCMS関連試薬、抗体カラム代等)として118万円を計上した。旅費(国内学会および国際学会参加費)、謝金(データ解析業務)、その他(機器メンテナンス代)として、それぞれ36, 30, 30万円を計上した。
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