研究課題/領域番号 |
24659019
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
榎本 秀一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10271553)
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研究分担者 |
神野 伸一郎 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (20537237)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 太陽光発電 / 高効率太陽光発電材料・素子 |
研究概要 |
本申請研究では,凝集状態で蛍光の発光性が増大する性質を持つ,アミノベンゾピラノキサンテン系色素(ABPX)の誘導化研究を発展させ,色素増感型太陽電池の光増感性材料として応用展開することで,新たな太陽電池デバイス開発に向けた基礎基盤研究を行なう.平成24年度は,色素分子から金属電極上への効率的な電子送達や金属電極上への吸着力の向上を達成するために,ABPXの発色団の窒素部位周辺の構造的剛直化,アルキル鎖の伸張やベンゼン環部位へリンカー官能基の導入を行なうことで,量子収率の向上並びに色素分子間相互作用を考慮した新規誘導体を計18種類合成した.続いて,これらの溶液状態並びに固体状態での光物性評価を行った結果,従来の化合物と比べ,量子収率が飛躍的な向上に成功するとともに,各新規誘導体の蛍光寿命(f)を測定することで、放射速度定数(kf)並びに無放射失活速度定数(knr)をそれぞれ算出した.その結果,新規誘導体のkfは従来の化合物と殆ど変らない一方で、knrが大幅に減少したことから,ABPXのキサンテン環の蛍光団の構造的な剛直性の増加は,量子収率の向上において有効な分子設計の手段であることが分かった.加えて,ABPXのキサンテン環のアルキル側鎖が伸張するにつれ量子収率が増加した傾向を示したことから,アルキル鎖の伸長に伴う色素分子間相互作用の減少が,量子収率の向上に寄与していることが推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は当初の目標であった20種類の新規ABPX誘導体の合成をほぼ達成し,研究は概ね順調に進捗している.ソーラーシミュレータの購入が遅れたことに加え,発電ユニット組立の技術習得に時間を要しために光電流変換効率の測定には至らなかった.次年度は合成した全ての化合物の光電流変換効率の測定と装置発電ユニット全体としての評価を行い,特許申請に繋げる.
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今後の研究の推進方策 |
合成した新規誘導体を二酸化チタン電極へ吸着した後,吸着量に応じた光電流変換効率をソーラーシミュレータで測定し,従来の光増感性材料であるルテニウム色素増感剤と比較検証することで,ABPXの有用性について立証する.また電気化学的測定法としてサイクリックボルタンメトリーや密度汎関数法による計算化学的手法を併せ,フロンティア軌道論の面からABPXの電子送達性について検証・考察する.上記の研究成果を基に「色素増感型太陽電池の光増感剤」として特許申請を行う.また近赤外~赤外域に光の吸収波長を有するABPX 誘導体の分子設計と合成を引き続き行う.加えて,ABPXに最適な対極の種類や電解質溶液の組成を系統的に検討し,発電ユニット全体としての発電効率を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
90万円の次年度予算に対し,引き続き色素合成と電池モジュール作成に伴う薬品類(試薬、有機試薬等),実験用ガラス器具の購入並びに色素化合物の依頼分析に55万円を充当する.また,密度汎関数計算のためのGaussian 09 (Intel EM64T, Linux)の導入に35万円を充当する予定である.
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