脂質ラジカルは、それ自身あるいはその代謝産物が、酸化ストレス疾患の原因に密接に関与している。しかし、最終代謝産物以外、脂質ラジカルを検出できる系は、ESR/スピントラップ法以外存在しない。これは、脂質ラジカルが不安定で、脂溶性環境下での検出が困難なためである。我々はこれまで、脂質ラジカルと鋭敏に反応する新規スピン化合物を開発してきた。さらに昨年度までに脂質ラジカルと結合すると蛍光がONになる蛍光化合物を合成し、その物性を評価した。そこで本年度は、結合した脂質ラジカルの構造を解析することを目的とした。脂肪酸・リポキシゲナーゼ系を用いて検討したところ、酵素濃度依存的に蛍光強度が上昇することがわかった。さらに、反応後の分子をLC/MS/MSにて測定したところ、脂質ラジカルがプローブ剤に共有結合していることがわかった。さらにMSn測定することにより、結合した分子の構造推定が可能であることを見出した。 以上の結果より、脂質ラジカルを検出および構造推定が可能になる新たなプローブの開発に成功した。今後さらに疾患モデルに適用することで、脂質ラジカルの質的・量的変動と疾患との関係を明確にできると考えている。
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