研究課題/領域番号 |
24659024
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 浩司 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90136721)
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研究分担者 |
塩田 倫史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00374950)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Sigma-1受容体 / IP3 受容体 / ミトコンドリア障害 / 小胞体ストレス / 脳血管性認知症 / 抗うつ薬 |
研究概要 |
Sigma-1 受容体アゴニストである SA4503 は脳血管性認知症の認知機能改善薬および抗うつ薬として臨床試験が行われている。しかし、Sigma-1 受容体の神経系における役割と遺伝子変異による神経変性のメカニズムは不明である。本研究では Sigma-1部分欠失受容体(Sigma-1S受容体)の脳内分布と機能的役割について追究した。1)Sigma-1S受容体はSigma-1 受容体と複合体を形成して、脳内では共局在した。2)Sigma-1 受容体がIP3 受容体と複合体を形成するのに対して、Sigma-1S受容体は IP3 受容体と結合しない。3)Sigma-1S受容体は Sigma-1 受容体の機能であるミトコンドリアへのカルシウム輸送を抑制し、IP3 受容体刺激に伴うミトコンドリアATP 産生を抑制した。さらに、4)小胞体ストレスに伴う、ミトコンドリア障害とアポトーシスに対してSigma-1S受容体の過剰発現は増悪した。これらの結果から、Sigma-1S受容体はSigma-1 受容体に対して、機能阻害する変異体であることが明らかとなった。しかしながら、IP3 受容体以外のタンパク質に対するシャペロン機能に相違があるのか、さらにどのような病態でSigma-1S 受容体が誘導されるのか不明である。私達はSigma-1 受容体アゴニストがミトコンドリアへのカルシウム輸送を促進する一方で、細胞質への IP3 受容体依存性カルシウム放出を抑制することを発見した。この病態での意義についてさらに追究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、1)Sigma-1S 受容体の神経細胞での発現の機能的な役割を明らかにすること。2)Sigma-1 遺伝子変異による神経変性疾患と小胞体ストレスに伴う Sigma-1S受容体の発現が神経細胞死を惹起するメカニズムを明らかにすることである。1)に関しては24年度で目的を達成した。2)に関しても 8割以上達成しているが、 Sigma-1S 受容体が誘導される病態にすいては解明できていない。私達は新たに筋萎縮性側索硬化症の家系に見つかったSigma-1 遺伝子変異(E102Q)が機能異常を示し、神経細胞体で凝集体を作るメカニズムを発見した。この変異はSigma-1S受容体と同じような小胞体およびミトコンドリア障害を示すことから、病気発症の原因であると考えられる。これらの遺伝子変異体の機能を解明することは神経筋変性疾患の病態を解明する重要な手がかりとなる。
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今後の研究の推進方策 |
1)Sigma-1 遺伝子変異(E102Q)の神経細胞での局在と IP3 受容体および他の分子に対するシャペロン機能の変化について追究する。 2)アルツハイマー病、脳虚血、うつ病ではSigma-1 受容体が発現低下することが知られている。Sigma-1 アゴニストである SA4503のアルツハイマー病、脳虚血、うつ病モデル動物での神経保護作用とSigma-1 受容体の発現低下の病態との関わりを追究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)Sigma-1 遺伝子変異(E102Q)の神経細胞での局在と IP3 受容体および他の分子に対するシャペロン機能の変化について追究する。 2)アルツハイマー病、脳虚血、うつ病ではSigma-1 受容体が発現低下することが知られている。Sigma-1 アゴニストである SA4503のアルツハイマー病、脳虚血、うつ病モデル動物での神経保護作用とSigma-1 受容体の発現低下の病態との関わりを追究する。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額を合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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