最近我々は、ヒスチジン残基を活性中心とする全く新しいタイプのプロテインホスファターゼとしてPGAM5を見出した。興味深いことに、PGAM5はリン酸化セリンおよびリン酸化スレオニンを特異的に脱リン酸化するのに対し、Sts-1およびSts-2は同じヒスチジン型プロテインホスファターゼでもリン酸化チロシンを特異的にリン酸化する。そこで本研究では、これら以外の新規のヒスチジン型プロテインホスファターゼを探索するとともに、それらの構造と基質特異性との相関から新たなホスファターゼファミリーとしての機能を探り、既知の分子の機能では説明のできないタンパク質脱リン酸化を介した細胞機能調節の解明を目指した。平成24年度においては、PGAM5のPGAMドメインおよびC末端領域(90-289AA)の構造解析を行い、2つのヒスチジン残基と2つのアルギニン残基から酵素活性中心が形成されることが見出した。また、PGAM5は二量体を形成し、さらに二量体化がPGAM5の活性保持に必須であることも明らかとなった。しかし、構造解析に用いたPGAM5 90-289AAはほとんど活性を保持していないことが確認された。そこで活性の維持に必要なタンパク質領域を探ったところ、PGAMドメインよりN末端側も活性の保持に必要であることが分かった。平成25年度にはPGAM5の基質探索を行い、mRNAの代謝において重要な役割を担う核タンパク質SRm160を見出した。SRm160は定常状態において高度にリン酸化されており、PGAM5によって直接脱リン酸化されることが明らかとなった。今後、PGAM5の標的となるSRm160におけるリン酸化部位の特定を進め、PGAM5のヒスチジン型プロテインホスファターゼとしての脱リン酸化の分子機構の解明を進めたい。
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