研究課題/領域番号 |
24659029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
入村 達郎 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80092146)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 感染症 / 糖鎖 / 免疫学 / 薬学 |
研究概要 |
本研究の目的は、インフルエンザウイルス感染において、未知であった気道における抗インフルエンザウイルスIgA抗体の産生がいかに制御されるか、その機構を明らかにする事である。特に、免疫応答の制御は抗原提示細胞が担うとの観点から、鼻腔粘膜及び鼻腔粘膜リンパ組織に分布する事が期待された樹状細胞表面に発現するレクチンであるMGL2およびMGL1に注目した。本年度は、MGL2-KO及びMGL2-KOマウスにおいてインフルエンザウイルス(PR8株)において、二次感染の重篤度に変化があるかどうかを主に病理学的に検証した。その結果、MGL1-KOマウスでは影響が見られなかったが、MGL2-KOマウスでは、実験的に経鼻感染を起こさせた場合に より重篤であり、MGL2がインフルエンザに対する防御を担う一環である事が示唆された。しかし、その差についてはばらつきがあり、再度検証する必要性が示された。 さらに、感染に伴う免疫応答の制御機構を検討するため、感染後の肺洗浄液を取得してそこにおける細胞浸潤とサイトカイン産生について検討を加えた。その結果、MGL2-KOマウスにおいて、特徴あるサイトカインの増減は検出出来なかった。さらに、MGL2-KOマウスにおいてin vivoで、抗体産生の調節おけるMGL2の役割をin vivoで検証した。その結果、MGL2が機能的にTh2応答にかかわり、クラススイッチを制御している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、MGL2-KOマウスで、インフルエンザウイルス感染への抵抗性が低い事が示され、研究の進行と達成度は順調である。さらに再現性の検証が必要である。さらに、樹状細胞上のMGL2を標的として用いることにより、in vivoでTh2応答が誘導出来ることが示された。この研究でも、MGL2-KOマウスを用いることにより、Th2応答制御におけるMGL2の重要性に関して確証が得られた。さらに、MGL2陽性細胞の移入実験により、MGL2発現細胞のTh2応答における役割が示された。これらは、極めて重要な発見と考える。MGL2-KOマウスの繁殖状況が研究全体の進行に影響しているが、現状では大きな問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
感染性とIgA免疫応答MGL2との相互作用が強いインフルエンザウイルス株と弱いインフルエンザ株が、感染性や、免疫応答に関してどのように異なるかは知られておらず、重要な方向性と考える。また、IgA応答、IgA応答に関係するサイトカインの産生が、MGL2に依存する可能性をさらに追究する予定である。これらの免疫応答の研究に関しては、ウイルス粒子だけでなく、非活性化したワクチンを利用した際の防御応答の確立がMGL2に影響されるかどうかも追究する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、MGL2を発現する樹状細胞の性質、特にサイトカインプロファイル等の検定に使用する抗体等の購入にあてる。
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