研究概要 |
Hippoシグナル伝達系は、近年、発生・分化・器官サイズ・癌の発症進展を制御することが明らかにされ、国内外から急速に注目されている。本研究では、hydrodynamic tail vein injection (HTVi)法という簡便に肝臓特異的に遺伝子を導入する方法を用いて、Hippo系主要標的転写共役因子YAPの活性のgain of functionによる肝癌誘発状態を作り出し、マイクロアレイやChip-seq解析によって、マウス肝臓での転写情報(特にマイクロ(micro)RNAの発現)を解析することを目的とする。得られた転写情報を、正常増殖から腫瘍性増殖、腫瘍形成、転移に至る幅広いスペクトラムの表現型と比較対応し、癌を成立させるmRNAやマイクロRNAを効率よく抽出するとともに、“細胞競合(cell competition)説”の観点から検証する。本研究では、肝臓での安定な発現を期待して、アルブミンプロモーターの下流に、メダカと保存性の高いヒトの野生型および5SA変異YAPをコードするcDNAを挿入したベクターを利用した。HTVi法によって、4~8週令のマウスに、上記発現ベクターを導入し、8週間以降に5SA特異的な肝癌が誘導されていたので、1, 4, 8週間後にマウスを解剖し、肝臓を取り出した。肝癌が形成されている場合は、癌部と非癌部を分け、タンパク質解析用、microRNAマイクロアレイ用、cDNAマイクロアレイ用、Chip-seq解析用、組織染色用に肝臓を分けて処理した。現在、網羅的遺伝子解析そふとMoleNetを用いた解析を行っている。
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