研究課題/領域番号 |
24659031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 裕教 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50303847)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 脳・神経 / 発生 |
研究概要 |
大脳皮質は哺乳類において特に発達しており、非常に多くの神経細胞からなる特徴的な層構造が形成される。大脳皮質の発達初期において、神経前駆細胞が一度神経細胞へと分化するとそれ以上増殖することができないため、神経前駆細胞の増殖を制御することは大脳皮質の神経細胞の総数を決定し機能的な大脳皮質を形成する過程において非常に重要な要素であるが、その分子機構に関してはまだ一部しか理解されていないのが現状である。本研究ではマウス大脳皮質形成過程におけるGタンパク質活性制御因子の発現部位や時期の解析を行うとともに、神経前駆細胞の増殖を制御する分子基盤の理解に貢献することを目的として研究を行った。 RhoファミリーGタンパク質はその活性制御において、GEFの働きによって活性化される一方、GAPによって不活性化される。そこで、大脳皮質の発生過程において各RhoGAPが大脳皮質形成時に発現しているかどうかを調べるために、半定量的RT-PCR法を用いて発達段階のマウス脳におけるmRNAの発現を調べた。その結果、12種類のRhoGAPのうちsrGAP3を含む9種類のRhoGAPについてmRNAの発現が認められた。そこでこれら9種類のRhoGAPに対してそれぞれ特異的なRNAプローブを作成し、in situ hybridization法を用いてmRNAがマウス脳のどの部位に発現しているかについて詳しく調べた。その結果、9種類のRhoGAPのうちsrGAP3 mRNAが、胎生12日齢および胎生16日齢のマウス大脳皮質の脳室帯に強く発現していることが明らかになった。脳室帯でsrGAP3の発現が見られた時期は、神経前駆細胞が豊富に存在し、増殖が起こりつつ神経細胞へと分化する時期になっていることから、srGAP3が神経前駆細胞の増殖や分化に何らかの機能を担っている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画としてあげていた、マウス大脳皮質形成過程におけるG蛋白質活性制御因子の発現部位や時期の解析については、本年度までに srGAP3や別のRhoファミリーGタンパク質活性制御因子についても解析しており、マウス子宮内エレクトロポレーション法を用いて現在、それらの機能解析が進行しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究に引き続き、srGAP3や発現が認められた他の候補分子に対する活性変異体や特異的ショートヘアピンRNAの作成を行い、これらをYFPなどの蛍光蛋白を同時に発現するベクターに挿入し 、子宮内エレクトロポレーション法を用いて神経細胞分化前の神経前駆細胞にこのベクターを導入し、その後の 増殖や神経細胞への分化に対する影響を調べる。その後、機能が明らかになった分子に対しては、それらの結合タンパク質を探索することで、これらの分子を介した情報伝達機構の全容解明をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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