研究課題/領域番号 |
24659032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
立花 雅史 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80513449)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫寛容・抑制 / 肝臓 / T細胞 |
研究概要 |
「肝臓における免疫寛容の成立」と「正常な肝臓組織の機能維持」の分子メカニズムの解明を目指し、まず当該年度においては肝臓特異的な細胞群について、その単離方法の確立を試みた。肝星細胞は、従来の方法では肝臓をプロナーゼやコラゲナーゼで灌流した後、密度勾配法によって精製するものであるが、近年フローサイトメーターによる分取が報告された。そこで、当研究室でも高効率な肝星細胞の精製を試みたところ、精製度は十分に高いものであったが、回収率があまり高くなかった。現在、十分な細胞数の肝星細胞を精製すべく、プロトコールの最適化を行っている。一方で、肝実質細胞や類洞内皮細胞は十分な数を単離できたため、現在T細胞との共培養条件を最適化している。今後は共培養系により、T細胞の反応性について検討を進める。 一方で、T細胞側からのアプローチとして、表面分子の発現ならびに各種サイトカインの遺伝子発現について検討を行った。表面分子の発現解析から肝臓のT細胞では脾臓のT細胞に比べてCD44の発現が高いことが分かり、活性化状態にあることが示唆された。また、抑制性サイトカインとして知られるIL-10の発現について検討したところ、肝臓と脾臓のT細胞で差が認められなかった。しかしながら、肝臓全体あるいは脾臓全体でのIL-10発現は、肝臓で顕著であったことから、肝臓の微小環境はIL-10産生性である可能性がある。今後、どの肝臓特異的な細胞群がIL-10を産生するのか明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規に立ち上げた研究課題であるため、実験系の確立に予想以上に時間がかかった。特に、肝星細胞の単離が困難である。当初より、細胞数が多くは取れないことは予想していたものの、現状では残念ながら十分に解析ができない。
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今後の研究の推進方策 |
正常な肝臓に存在するT 細胞のマーカー分子、サイトカイン産生などをさらに評価し、T 細胞の性質を同定する。特にCD4 陽性T 細胞(ヘルパーT 細胞)とCD8 陽性T 細胞(細胞傷害性T 細胞)について精査する。そして、肝臓特異的細胞群から受ける刺激によりT 細胞に形質的・機能的変化がもたらされるのかを評価するため、脾臓やリンパ節から単離したナイーブT細胞を肝臓特異的細胞群と共培養することで、活性化マーカー発現量やサイトカイン産生能に及ぼす影響について解析する。また逆に、肝臓特異的細胞における変化、例えば細胞増殖や細胞死に影響が及ぶかどうか、について検討を行う。これらの検討により、免疫寛容が成立している正常肝臓において肝臓特異的細胞群とT 細胞とが相互に及ぼし合う影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
タンパク発現やmRNA発現について検討を行うため、関連する分子生物学関連試薬の購入に充てる。また、T細胞と肝臓特異的細胞群と共培養を行い、それぞれの細胞増殖や細胞死について検討を行うため、それらを評価可能な試薬類や培養関係試薬を購入する。 また、免疫寛容成立に関わる候補遺伝子を同定した後は、それらのリコンビナントタンパクやsiRNA実験、発現ベクター構築を行うため、それらの関連試薬を購入する。
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