研究課題/領域番号 |
24659034
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩田 修永 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70246213)
|
キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / γセクレターゼ / プレセニリン / 活性調節 |
研究概要 |
研究計画に従って実験を進め、初年度までにγセクレターゼ活性を修飾する可能性がある候補遺伝子11種を理研バイオリソースセンターより入手し、動物細胞発現ベクターに組み込みC末端にHAエピトープタグを付与した。これらのベクタープラスミドをAPP安定発現株に遺伝子導入し、各遺伝子の発現を確認した。今年度は新たに, 追加で二つの候補遺伝子をサブクローニングし、さらに上述の遺伝子について、N末端にFLAGタグを融合したコンストラクトを作製して、全ての発現確認を終了させた。一方、Aβ産生比は細胞密度によって影響を受け、また使用するメディウム中のFBSの含有率によっても測定値にバラつきが生じるため、トランスフェクションからメディウム回収までの条件検討を行い、至適化を行った。具体的には、候補遺伝子をトランスフェクション後48hでメディウムを除去し無血清培地(Neurobasal + B27)に交換後、24時間でAβを定量することにした。トランスフェクション後に培地を交換することには、medium に含まれるトランスフェクション前の内在性のAβの量をリセットする目的があり、さらに交換する培地を無血清培地にすることで、候補遺伝子を見出したiPS 細胞から神経細胞への分化の条件に近似し、FBS 中のプロテアーゼやAβ と結合するタンパク質が関与する可能性を除去することができると考えられる。現在、一過性過剰発現系で、Aβ42/Aβ40比の変化の解析を進めている。また、候補遺伝子とAPPとの安定的共発現系の構築も進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は先行研究のDNAマイクロアレイによってγ-セクレターゼの機能変化に関与する可能性が示唆された候補遺伝子がAβ42/Aβ40産生比の変化をもたらすかを明らかにし、実際にそのような遺伝子が同定されればその分子機構を明らかにすることを目的としている。幸いにも初年度において、既にAβ42/Aβ40産生比の変化関与する遺伝子の同定に成功しており、また、研究計画に照らし合わせても当初の目的を達成していると言える。本年度は、候補分子のサブクローニングの追加と、C末端のみならず、N末端へタグ配列を融合すうコンストラクトの作製と共にAβ測定のためのトランスフェクション条件等を確立し、候補遺伝子の動物細胞での遺伝子発現を確認しており、Aβ42/Aβ40産生比の解析を待つ状態になっている。また、このように、本研究は当初の計画通り順調に進んでおり到達度は高い。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の研究成果を踏まえ、まずはAβの最終的な切出しを行う「γセクレターゼ」とAβ42の切り出しを特異的に亢進しAβ40産生量には影響を与えない分子「SLC39A3」にターゲットを置き、その分子機構を明らかにした上で、Aβ42の切り出しを低下させることにより、副作用が少なく安全性が担保される創薬を目指す。これらの基礎研究により創薬開発基盤を固めた上で、SLC39A3に拮抗する低分子化合物のスクリーニング研究へと発展させていく。また、その他の候補遺伝子についても、過剰発現およびノックダウンシステムによってAβ42/Aβ40 比の変化が観察され次第、その分子機構の解明をin vitro系だけでなく、in vivo解析も含めて進めていく予定である。
|