研究課題/領域番号 |
24659037
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
水島 徹 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (00264060)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 |
研究概要 |
(1)対象既存薬を決定する現在のところ、抗AD作用が知られているグリタゾン系糖尿病治療薬、スタチン類、エストロゲン、アンジオテンシン拮抗薬、カルシウム拮抗薬を考えていた。一方、疫学調査などを行い、新たな対象既存薬をリストアップした。 (2) 対象既存薬の作用を分子レベルで網羅的に解析する 1 誘導遺伝子の網羅的解析:DNAチップ、プロテインチップなどを用いて、対象既存薬により誘導される遺伝子を様々な条件で同定した。神経細胞、グリア細胞など様々な細胞を用いると同時に、βアミロイドを発現している細胞なども用いた。興味深い遺伝子(AD抑制に関与している可能性がある遺伝子)に関しては、ADに関する細胞評価系(神経由来培養細胞におけるβアミロイドの産生など)にその既存薬を作用させ、効果が見られるかを検討した。さらにAD動物モデル(APP過剰発現マウス)を用いてその既存薬のβアミロイド量、神経細胞死、記憶学習能力に対する効果を調べ、効果が見られた場合、その効果がその遺伝子発現変化に依存しているかを評価した。2 結合タンパク質の網羅的解析:ヒト全タンパク質を二次元電気泳動により分離後、蛍光標識した対象薬を作用させ、対象薬に結合するタンパク質を網羅的に同定した。同定したタンパク質の解析(AD抑制機構の解明へ向けた解析)は、上述の誘導遺伝子の場合と同様に行った。3 その他の網羅的解析行った。具体的には、既存薬を細胞に作用させ、細胞内情報伝達物質(cAMP, Ca2+など)の変化を網羅的に解析した。4 既存薬ライブラリーを用いたスクリーニング:我々は国内で使用されている約800種の既存薬の内、600種を網羅した既存薬ライブラリーを構築している。そこで本研究費を使用して、購入可能なすべての既存薬を揃えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、対象既存薬の決定に関しては、疫学調査などを行い、新たな対象既存薬をリストアップした。また、対象既存薬の作用の分子レベルでの網羅的解析に関しても、DNAチップ、プロテインチップなどを用いて、対象既存薬により誘導される遺伝子を様々な条件で同定するとともに、ヒト全タンパク質を二次元電気泳動により分離後、蛍光標識した対象薬を作用させ、対象薬に結合するタンパク質を網羅的に同定した。このように、申請時の研究計画に沿って研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
候補既存薬の絞り込み:選択された既存薬から、有用な既存薬の絞り込みを行う。絞り込みのポイントは、ADのモデルマウスでの効果、疫学などの臨床的なエビデンスの強さ、安全性・投与しやすさ、特許環境などである。 既存薬の周辺化合物を合成し、その作用を調べる:本研究では、ヒトでの安全性や体内動態が確認されているという既存薬の利点を活かすために、出来れば既存薬それ自体を対象にしたい。しかし薬理効果が弱いなどの問題がある場合は、周辺化合物の合成を行う。即ち、リストアップした既存薬の周辺化合物を多数合成する。その際、明確な合成戦略を立てて系統的に合成を行う。例えば我々は、膜傷害性が少ないNSAIDを得るために、NSAIDと膜との相互作用をシミュレーションし合成戦略を立てた結果、高い確率で膜傷害性の少ないNSAIDを得ることが出来た(J Med Chem 2010)。合成した化合物の作用を細胞・動物を用いて解析し、AD治療薬として有用な化合物を選択する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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