研究課題
プロテオグリカンはグリコサミノグリカン鎖(GAG)によって修飾された糖タンパク質であり、その機能発現には糖鎖が重要である。GAG修飾は主にゴルジ体で行われるため、ゴルジ体ストレス応答と呼ばれる品質管理機構によって制御を受けている可能性が高い。我々は昨年度、この品質管理に関わる分子の一つとしてEXTL2 を同定した。GAGの合成はキシロースがコアタンパク質に転移されることにより開始され、四糖からなる結合領域が合成された後、最初のへキソサミンが転移されて二糖単位が繰り返される領域の合成が開始される。我々が以前クローニングしたFAM20Bによる一過的なキシロースのリン酸化は、結合領域の合成を促進するが、結合領域四糖の合成完了とともに速やかに脱リン酸化され、二糖単位が繰り返される領域の合成が開始される。EXTL2は脱リン酸化が起こらなかった結合領域四糖にα1-4結合でN-アセチルグルコサミンを転移し、糖鎖の伸長を停止させる酵素であることを見出した。実際、EXTL2遺伝子欠損マウスでは、この合成調節機構が働かないため、GAGの量が増加していた。この合成異常は、発生過程や正常時の生体の恒常性維持には大きな影響を示さなかったが、四塩化炭素を用いて急性肝炎を起こすと、病態が野生型マウスよりも重篤化することが判明した。この原因を調べたところ、EXTL2遺伝子が欠損した肝細胞では、肝細胞増殖因子に対する応答が顕著に低下しており、細胞増殖能と生存能の低下が観察された。また、肝再生過程において、EXTL2遺伝子欠損マウスの星細胞では、GAGの合成異常が起こっていること、そしておそらくこのことにより、損傷後に構築される細胞外マトリックスの状態が変化していることが判明した。これらのことにより、EXTL2によるGAGの合成調節機構は、GAGの合成が活発に起こる病態時などに重要な役割を果たすこと、そして、この調節機構の破綻が病態と密接に関連することが示唆された。
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