研究概要 |
前年度に引き続き、抗真菌薬のカイコモデルにおける薬物動態について解析を行った。当該年度においては、上市されている抗真菌薬について、カイコ体液中のタンパク結合率と、カイコカンジダ感染モデルにおける治療効果の関係について検討を行った。その結果、現在外用薬として用いられている三種の抗真菌薬はタンパク結合率が高く、カイコ体液添加によって抗真菌活性が30倍以上低下した。一方、静注で使用されているフルコナゾールはタンパク結合率が、前述の3種の抗真菌薬に比べ低く、抗真菌活性の低下も3倍にとどまっていた。さらに、前者3つの抗真菌薬は、カイコ感染モデルにおける治療効果が低いのに比べ、フルコナゾールは少ない用量で治療効果を示した。これらの結果は、これまで知られている哺乳動物での結果とよく一致していた。従って、カイコカンジダ感染モデルは、哺乳動物と同様に、蛋白結合率や分布容積等の薬物動態パラメーターを反映した、抗真菌薬の治療効果の評価系になっていると考えられる。 次にカイコカンジダ感染モデルを用いて、抗真菌活性を示す化合物の探索を試みた。まず、試験管内において抗カンジダ活性を示す化合物をスクリーニングしたところ、49,999化合物のうち、196化合物が増殖阻害活性を示した。それらの化合物を、カイコカンジダ感染モデルにおいて治療効果を検討したところ、治療効果を示す化合物は見いだされなかった。抗黄色ブドウ球菌感染モデルにおけるスクリーニング結果と比較して考察すると、対象となる抗真菌活性を示す化合物が少なかったために、治療効果を示す化合物が見いだされなかったのだと考えられる。抗真菌治療薬の発見のためには、より大きなスクリーニングサイズが必要であると考えられる。
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