研究課題/領域番号 |
24659049
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
赤井 周司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60192457)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ポリエチレングリコール / Huisgen反応 / フルオラス化学 / PEG化医薬品 / 創薬 |
研究概要 |
新薬候補化合物に長鎖ポリエチレングリコール (PEG) を結合することで,抗原性の消失,血中濃度の長時間維持,副作用の軽減などを図る研究が活発である。本研究の目標は,PEG化医薬品候補化合物のマイクロドーズ臨床試験を可能にする「[18F]F-PEG-医薬品候補化合物」(1)を簡便・迅速に調製する技術を開発することである。通常,求核性が弱いフッ素アニオンを長鎖PEGに導入するためには80℃以上に加熱する必要があるが,熱に不安定なペプチドが結合したPEGには適用できない。また,半減期が短い18F の導入反応は20分以内に完了することが望ましい。そこで,クリック化学(Huisgen反応),フルオラス化学,固相合成などを活用して上記目的に適う合成法を開発する。平成24年度は安定同位体19Fを使って(1)を迅速に合成する手法開発を行い,以下の成果を得た。 1.リンカーを介してペプチド鎖の末端に高反応性アルキン鎖が結合した化合物を合成した。また,アジド基が末端に結合したPEG (Mw 2kDa)とBu4NFを80℃で反応させてN3-PEG-Fを調製した。これら2つの成分を有機溶媒中攪拌すると,銅触媒を用いなくてもHuisgen反応が進行し,室温20分で両成分が結合したF-PEG-ペプチドが得られた。 2.フルオラス化学を利用し,長鎖PEGのフッ素化促進を検討した。まず,フルオラス脱離基を結合した前駆体と,カチオン部にフルオラス鎖を有する[Rf-NR3]Fを合成した。現在,フルオラス溶媒と有機溶媒の混合比を変えてフッ素化の効率を検討中である。 3.優れた脱離性を有するリンカーを介してPEGの一端を樹脂に結合し,他端を適宜修飾した。最後にフッ素化反応を行うことで,F-PEGが樹脂から切り離された。本法は,樹脂に固定化したPEGの洗浄,ならびに生成物F-PEGの精製が簡便に行えることが利点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フルオラス化学の利用研究(上記2)は少し送れているが、同時に検討していたクリック化学(Huisgen反応)を利用するアイデアがF-PEG(2kDa)-ペプチドの合成には極めて有用であることがわかった(上記1)。また、短い鎖長のPEGで固相合成法の実効性も検証できた。従って、総合的には、おおむね順調に進展していると判断した。 また、上記の研究実績1に関して、本年度末に特許出願した。そのため、論文や学会での発表は控えた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では2kDaのPEGを用いているが、これを10kDa以上の長いPEGに応用するためには、フルオラス化学や固相合成法が有用である。これらの研究を進め、当初の目標を達成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験を効率的に行ったことによって、薬品とガラス器具の購入費が当初の予定よりも少なかったために当該助成金が生じた。平成25年度の実験では高価な薬品が必要となるので、この購入費に充てることができる。
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