研究課題
新薬候補化合物に分子量数千kDa~数万kDaの長鎖ポリエチレングリコール (PEG) を結合することで、抗原性の低下、血中濃度の長時間維持、副作用の軽減などを図る研究が活発である。本研究では、種々のPEG化医薬品候補化合物の[18F]フルオロ誘導体、すなわち[18F]F-PEG-Drug (1)を簡便・迅速に調製し、マイクロドーズ臨床試験に資する技術開発を行う。フッ素アニオンは求核性が弱く、18Fの半減期が短いために、長鎖PEGに短時間で[18F]Fを導入するためには80℃以上に加熱する必要がある。しかし、本反応条件はペプチドなどの熱に不安定な化合物が結合したPEGには適用できない。そこで本研究では、クリック化学(Huisgen反応)などを活用して上記目的に適う(1)の合成法を開発する。平成25年度は以下の成果を得た。1. 安定同位体19Fを使って(1)を迅速に合成する手法開発を検討した。まず、PEG (Mw 2kDa)の一端に高活性アルキンを有し、他端にペプチドを結合するための官能基を有する機能性PEGを合成した。これを、昨年度合成した、末端にアジド基が結合したF-PEG (Mw 2kDa)とHuisgen反応によって連結し、全長4kDaの修飾F-PEGを合成するルートを開拓した。2. インテグリンαvβ3に結合するRGDfCを有するアルキンと、蛍光色素AlexaFluor647とアジド基を有するPEG (Mw 2kDa)をHuisgen反応によって連結し、末端にRGDfC、他端に蛍光色素Alexa647を有するPEG (Mw 2kDa)(1a)を合成した。また、RGDfCの代わりにアルキルチオ基を有する対象化合物(1b)を合成した。両化合物を、ヒト肺がん細胞を移植したマウス尾静脈に投与し、AlexaFluor647の蛍光によってin vivoイメージングした。その結果、これらの化合物の体内動態を非侵襲的に観察することができた。特に、1aが腎臓および腫瘍へ集積する様子が観察された。3. JSTの支援を受けて上記の合成法をPCT出願した。
3: やや遅れている
1.ペプチドを結合するための官能基を有するF-PEGの合成ルートを見出すことが出来たが(研究実績概要1)、ペプチドとの結合ならびに18F化が実施できていない。2.鎖長2kDaのPEGで、蛍光によるin vivoイメージングに成功したが(研究実績概要2)、もっと長いPEGにも適用できることを実証しなければならない。
1.安定同位体19Fを用いて、RGDfCが結合したF-PEG(Mw 4kDa)の合成法を完成させる。その後に、[18F]F-PEG-ペプチドを合成し、その体内動態をPETで可視化できることを実証する。2.鎖長4kDa以上のPEGを用いて、蛍光色素-PEG-ペプチドの合成条件を確立させる。これらの化合物について、鎖長による体内動態の違いを明らかにする。3.前記のHuisgen反応を活用する標識化PEG化医薬品の合成法と動態解析について、本年度末にPCT出願した。そのため、論文や学会での発表は控えたが、平成26年度には実験を追加して、積極的に学会発表と論文発表を行う。
構造修飾した長鎖PEGの取り扱いが難しく、また、精製と構造決定に手間取り、研究計画の遂行に遅れが生じた。また、今年度は、前年度に購入していた薬品を使って、前述の問題点の解決検討を主に行った。そのため、薬品類の購入費が非常に少なく、次年度使用額が生じた。この1年間の検討の結果、問題解決の目処が立ったので、平成26年度まで研究期間を延長し、繰り越し研究費を活用して、当初の研究目標の達成と更なる発展をめざす。主な使途は、薬品や実験動物の購入費、18F実験費、研究打合せや学会発表のための旅費である。
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Mol. Pharmaceutics
巻: 10 ページ: 2261-2269
10.1021/mp300469m