ペプチドや抗体のような高分子化合物に分子量数千~数万kDaの長鎖ポリエチレングリコール (PEG) を結合して抗原性の低下、血中濃度の長時間維持、副作用の軽減などを図る研究が活発である。これらPEG化された医薬品候補化合物に放射性同位体[18F]フルオロ基を導入した[18F]F-PEG-Drug (1)を調製することができれば、PETによる非侵襲的な体内動態解析によって有益な情報を得ることが出来る。しかし、[18F]Fの半減期が110分と短く、かつ、フッ素アニオンの求核性が低いために、ペプチドが結合した(1)の合成は困難で、これまで成功例がなかった。本研究では、Huisgen反応を活用してこれらの問題点を克服し、上記目的に適う(1)の合成法を開発する。平成26年度は以下の成果を得た。 1.H25年度、予備検討として、放射性同位体[18F]Fの代わりに取り扱い容易な蛍光色素を利用した。すなわち、末端にRGDfCを他端に蛍光色素を有するPEG (Mw 2kDa)(1a)をHuisgen反応によって合成できることを見出した。H26年度は、この合成法のスケールアップと収率の改善を行った。さらに、1aをヒト肺がん細胞を移植したマウス尾静脈に投与し、蛍光色素によるin vivoイメージングを行った。これらの結果は、本法が体内動態解析に有用な手法を提供できることを示している。 2.安定同位体[19F]Fを使って、2つのPEG(2kDa)をHuisgen反応で結合して全長4kDaの(1)を迅速に合成する反応条件(基質濃度、反応温度、溶媒)を検討した。その結果、適切な条件を選択することで10分間以内にHuisgen反応が完了することを見出した。現在、より長いPEGが結合した(1)の合成を実現すべく、更なる改良を進めている。
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