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2013 年度 実施状況報告書

細胞内局在性を有するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の合成

研究課題

研究課題/領域番号 24659050
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

宮田 直樹  名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50114674)

キーワードヒストン脱アセチル化酵素 / 細胞内局在性 / エピジェネティクス / 分子標的治療薬 / 制がん剤 / 光解除性保護基 / ケージド化合物 / 蛍光検出
研究概要

遺伝子発現をエピジェネティックに制御する酵素の一つであるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)には、核に存在しヒストンを基質とするHDACのみならず、HDAC6のように細胞質に局在し微小管のα-チューブリンを基質とし微小管の安定化に寄与するHDAC、あるいは、HDAC3,8,9などのように細胞核と細胞質の両方に存在するHDACなどが見出されている。HDACは、広くタンパク質のアセチル化されたリシン残基を脱アセチル化酵素として、細胞の恒常性維持に係わる多様な機能が注目されている。本研究は、HDACの細胞内局在性と機能発現との関連の解明に焦点を当て、細胞内局在性を有するHDAC阻害剤を設計・合成しHDACの機能解明に役立たせることを目的とする。昨年度は、クリックケミストリーの手法を用いることにより、HDAC8に選択性を有する阻害剤(J.M.C., 2012、ChemMedChem, 2014)、HDAC3に選択性を有する阻害剤(PLoS One, 2013)を見出した。今年度は、HDAC阻害剤に細胞内の局所で活性を持たせる方法として光解除性ケージド化の手法を用いることとして研究を行った。光解除性ケージド化合物とは、光解除性の保護基で生物活性物質の活性基を保護し,生物活性を失わせた分子であり、光照射により保護基が脱保護され活性化合物となる。また、光照射により脱離した保護基の蛍光が変化するような分子設計を行った。HDAC阻害剤の生物活性官能基であるヒドロキサム酸構造部分を光解除性保護基で保護した化合物を種々合成し、光脱保護による活性化合物の生成ならびに蛍光変化を解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞核以外にも局在し生物活性を有するHDACに対する選択的な阻害剤として、HDAC8およびHDAC3選択的な阻害剤を創出することができたことは一つの達成点であり、評価できる。HDAC阻害剤への細胞内局在性の付与については、当初、局在性官能基と蛍光性官能基を有する無保護のHDAC阻害剤の開発を計画した。この化合物では、局在性官能基によりHDAC阻害剤が細胞内で局在し、その局在性を蛍光性官能基により確認することができる。しかし、この考えに基づく化合物では、無保護の阻害剤が細胞内で局在化する前にすなわち非局在的にHDACを阻害する可能性を除外できない。そこで、光解除性の保護基を持つケージド化合物の手法を取り入れた化合物の設計・合成を行うことに計画を変更した。この方法では、HDAC阻害剤の保護基を光照射により除去することにより阻害活性を発現させることができる。現在、光解除性の保護基を持つHDAC阻害剤の開発に軸足を置いて研究を展開している。

今後の研究の推進方策

本研究の基盤となる、HDAC選択を有する阻害剤の開発研究は、今年度も推進する。
光解除性保護基を有するHDAC阻害剤の合成については、最終年度である今年度中に目処を付けたいと考えている。
光解除性保護基を有するHDAC阻害剤に細胞内局在性を有する官能基を導入する研究についても、研究者がすでに確立している核、ミトコンドリア、細胞膜などに局在性を有する官能基を導入した化合物を設計し合成する。
合成した化合物のアイソザイム選択性を含むHDAC阻害活性は酵素系を用いて測定する。
細胞内局在性HDAC阻害剤は、未だ解明されていないHDACの細胞内局在性と機能との関連を解明するためのツールとして役立つと考える。また本研究は、HDACの細胞内局在性と機能を解明するためのツールを提供するのみならず、他にも存在する細胞内局在性酵素(ヒスチジン脱炭酸酵素やタンパク質リン酸化酵素など)の局在性と機能を解明するための方法論を提示することが期待できる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Identification of Novel SIRT2-Selective Inhibitors Using a Click Chemistry Approach2014

    • 著者名/発表者名
      109. Prima R. Tatum, Hideyuki Sawada, Yosuke Ota, Yukihiro Itoh, Peng Zhan, Naoya Ieda, Hidehiko Nakagawa, Naoki Miyata, Takayoshi Suzuki.
    • 雑誌名

      Bioorg. Med. Chem. Lett

      巻: 24 ページ: 1871-1874

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2014.03.026

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Design, Synthesis, and Biological Activity of NCC149 Derivatives as Histone Deacetylase 8-Selective Inhibitors2014

    • 著者名/発表者名
      110. Takayoshi Suzuki, Nobusuke Muto, Masashige Bando, Yukihiro Itoh, Ayako Masaki, Masaki Ri, Yosuke Ota, Hidehiko Nakagawa, Shinsuke Iida, Katsuhiko Shirahige, Naoki Miyata.
    • 雑誌名

      ChemMedChem

      巻: 9 ページ: 657-664

    • DOI

      10.1002/cmdc.201300414

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification of Highly Selective and Potent Histone Deacetylase 3 Inhibitors Using Click Chemistry-Based Combinatorial Fragment Assembly2013

    • 著者名/発表者名
      98. Takayoshi Suzuki, Yuki Kasuya, Yukihiro Itoh, Yosuke Ota, Peng Zhan, Kaori Asamitsu, Hidehiko Nakagawa, Takashi Okamoto and Naoki Miyata.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 8 ページ: e68669

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0068669

    • 査読あり
  • [学会発表] HDAC8選択的阻害薬の創製研究2014

    • 著者名/発表者名
      太田庸介、伊藤幸裕、武藤伸輔、中川秀彦、宮田直樹、鈴木孝禎
    • 学会等名
      第31回 メディシナルケミストリーシンポジウム
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20141120-20141122
    • 招待講演
  • [学会発表] クリックケミストリーを用いたHDAC8選択的阻害薬の創製研究:リード化合物探索から構造最適化研究まで2013

    • 著者名/発表者名
      太田庸介、武藤伸輔、伊藤幸裕、中川秀彦、宮田直樹、鈴木孝禎
    • 学会等名
      第63回日本薬学会近畿支部大会
    • 発表場所
      京田辺
    • 年月日
      20131012-20131012
    • 招待講演
  • [学会発表] HDAC3選択的阻害薬の創製と化学遺伝学的応用研究2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤幸裕、粕谷侑輝、中川秀彦、水上民夫、宮田直樹、鈴木孝禎
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会 第8回年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130619-20130621
    • 招待講演
  • [学会発表] Click chemistryによるHDAC阻害薬ライブラリーの構築とアイソザイム選択的阻害薬の同定2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤幸裕、太田庸介、粕谷侑輝、中川秀彦、宮田直樹、鈴木孝禎
    • 学会等名
      第11回次世代を担う有機化学シンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130524-20130525
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規HDAC8選択的阻害薬の開発と生物活性評価

    • 著者名/発表者名
      3. 太田庸介、伊藤幸裕、武藤伸輔、中川秀彦、宮田直樹、鈴木孝禎
    • 学会等名
      日本薬学会 第134年会
    • 発表場所
      熊本

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公開日: 2015-05-28  

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