研究概要 |
遺伝子発現をエピジェネティックに制御する酵素の一つであるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)には、核に存在しヒストンを基質とするHDACのみならず、HDAC6のように細胞質に局在し微小管のα-チューブリンを基質とし微小管の安定化に寄与するHDAC、あるいは、HDAC3,8,9などのように細胞核と細胞質の両方に存在するHDACなどが見出されている。HDACは、広くタンパク質のアセチル化されたリシン残基を脱アセチル化酵素として、細胞の恒常性維持に係わる多様な機能が注目されている。本研究は、HDACの細胞内局在性と機能発現との関連の解明に焦点を当て、細胞内局在性を有するHDAC阻害剤を設計・合成しHDACの機能解明に役立たせることを目的とする。昨年度は、クリックケミストリーの手法を用いることにより、HDAC8に選択性を有する阻害剤(J.M.C., 2012、ChemMedChem, 2014)、HDAC3に選択性を有する阻害剤(PLoS One, 2013)を見出した。今年度は、HDAC阻害剤に細胞内の局所で活性を持たせる方法として光解除性ケージド化の手法を用いることとして研究を行った。光解除性ケージド化合物とは、光解除性の保護基で生物活性物質の活性基を保護し,生物活性を失わせた分子であり、光照射により保護基が脱保護され活性化合物となる。また、光照射により脱離した保護基の蛍光が変化するような分子設計を行った。HDAC阻害剤の生物活性官能基であるヒドロキサム酸構造部分を光解除性保護基で保護した化合物を種々合成し、光脱保護による活性化合物の生成ならびに蛍光変化を解析中である。
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