研究課題/領域番号 |
24659052
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
馬原 淳 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80416221)
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研究分担者 |
山岡 哲二 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタボリックスイッチング / 代謝異常疾患 / リウマチ |
研究概要 |
本研究では、代謝異常に対する新たな治療戦略を確立する目的で、体内で病因物質をトラップし別の代謝経路へと誘導して体外へ排泄させる “メタボリックスイッチング”という新たな治療メカニズムの実現化に挑戦している。初年度では、Protein AとLDLレセプターへ結合できるペプチド結合体(ナビゲータ分子)の作製を進めた。肝臓細胞を用いた取り込み効果の検討を進める中で、ナビゲータ分子と細胞との非特異的な結合力が強く、それがペプチド配列の認識能の低さであることが問題点として見出された。さらに、Protein AとApo Eとの結合体との合成も進めたが、2分子からなる複合体が安定に形成できないという問題があった。そこで新たに、病因院物質に対するIgG抗体にSH基を導入し、さらにポリエチレングリコールかなるリンカーを介してApo Eを結合させることで、安定にタンパク複合体を作製できることを見出した。さらに、この分子を用いて肝臓細胞に対する病因物質誘導効果を共焦点レーザー顕微鏡にて評価した。その結果、選択的に分子を細胞内へ誘導できることが明らかとなった。また、リウマチモデルマウスを用いて、血中の病因物質である自己抗体の除去効果をin vivoイメージャーにて評価した。予備的データではあるが、ナビゲータ分子により選択的に肝臓細胞へ病因物質を誘導出来る可能性を見出した。今後、分子構造の最適化とin vivo実験の再現性や、定量的な解析を進めることで、メタボリックスイッチングという薬剤概念の実現性についての検討をさらに進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、研究計画に記述した2つのナビゲータ分子の作製を検討した。作製した分子は、LDLレセプターに対する認識配列ペプチドとProteinAとの結合体と、Protein AとApo Eの2分子タンパク複合体である。前者は、細胞を用いた検討においてLDLレセプターに対する選択的結合が十分に示されず、また後者は安定した合成経路が確立できなかった。新たに設計した分子であるIgG抗体とApoEからなるタンパク複合体は、ポリエチレングリコールリンカーを用いて安定に作製でき、さらに細胞実験のみならずリウマチモデルマルスを用いたin vivo実験においても選択的な病因物質除去効果を示すことができた。研究計画で初年度目標としていたナビゲータ分子の設計については、上記のような工夫により概ね予定通りに遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、初年度で設計した新たなナビゲータ分子であるIgG-ApoE複合体を用いて、リウマチモデルマウスを使ったin vivoでの病因物質除去効果についてin vivoイメージャーを用いて詳細に検討する。一方で、リウマチモデルマウスの実験系はマウス1匹に対するナビゲータ分子の費用が非常に高価であることも含め、in vivo実験の十分な実験回数を確保することが難しい。そこで新たなに、代謝異常疾患の1つであるアミロイドーシスの病因物質であるβ2-ミクログロブリンをターゲットとしたナビゲータ分子を設計し、細胞実験ならびにin vivo実験を検討する。これにより、血中にある微量の病院物質を除去することで効率的に治療効果が検討できるために、ナビゲータ分子のスクリーニングや、薬理メカニズムを詳細に検討できると考えている。初年度で得られた実験成果を基に、これらの状況を勘案して効率的な研究成果の創出を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、細胞を用いたナビゲータ分子の有効性のスクリーニングを効率的に進めることがきたため、比較的安価に薬剤を合成でき実験を進めた。一方で、in vivoでのリウマチマウスを用いたナビゲータ分子の薬剤効果の検討では、マウス1匹に対する薬剤量が多量となり高価となる。このため、β2ミクログロブリンの実験系を構築して、安価にスクリーニングを進める一方で、in vivoでの薬剤効果を検証する。このような状況から、次年度以降は、初年度での残金も含め細胞や動物などの費用に対して研究経費を充当して、効率的な成果創出を進める。
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