研究課題/領域番号 |
24659052
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
馬原 淳 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80416221)
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研究分担者 |
山岡 哲二 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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キーワード | メタボリックスチッチング / 代謝異常疾患 / リウマチ / 透析アミロイドーシス |
研究概要 |
本研究では、代謝異常に対する新たな治療戦略を確立する目的で、体内で病因物質をトラップし別の代謝経路へと誘導して体外へ排泄させる “メタボリックスイッチング”という新たな治療メカニズムの実現化に挑戦している。昨年度までに、リウマチ疾患に対するナビゲータ分子としてApoEとIgGをポリエチレングリコールリンカーを介して合成した複合体を作製し、細胞を用いた病院物質誘導効果ならびにリウマチモデルマウスを用いた血中での病院物質誘導効果をin vivoイメージャーにて評価した。その結果、病院物質を肝臓組織へ効率的に輸送できる事が見出されたことから、ApoEとIgGとの複合体を用いることによるメタボリックスイッチングの可能性を見出すことができた。再現性の検討、ならびに本概念の他の疾患への拡張性について検討するため、25年度ではアミロイドーシスを想定した実験系において開発した複合体の有効性を検討した。βII-ミクログロブリンに対するIgG抗体と、ApoEとを結合させた複合体をヌードマウスに投与し、血中βIIミクログロブリン量の変化と動態を検討した。その結果、予め投与していたヒトβIIミクログロブリンは、ナビゲータ分子の投与により肝臓組織への集積が3倍増加することが認められた。またin vitro実験においてもその集積を認めたことから、ApoEとIgG抗体との複合体は、透析アミロイドーシスにおいても誘導効果を発揮した。リウマチのみならず、アミロイドーシスにおける系でも誘導効果を認めたことから、提唱したこの概念を一般的な薬理作用に拡張できる可能性が考えられる。今後、定量的な解析データの蓄積を図ることで、メタボリックスイッチングという薬剤概念の現実性についての検証をさらに進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、新たに設計したApoEとIgGとの複合体を薬剤分子として用いることで、リウマチ疾患モデルマウスにおいて、病因物質の誘導効果を見出すことに成功した。本年度は、その概念の再現性ならびに拡張性について検討するために、アミロイドーシスをターゲットとした薬剤へと分子を変更して、その誘導効果について検討した。その結果、リウマチ疾患と同様に、病因物資であるβIIミクログロブリンを肝臓組織へ誘導している結果が得られた。これは昨年度に得られた成果の再現性を支持するものであり、ApoEとIgGからなる薬剤の有効性を裏付けるものである。この成果は、当初の研究計画において予定していたメタボリックスイッチングを実現化するための薬剤設計の確立において目指していたものであることから、当初の研究目標を概ね達成していると考えている。一方で、肝臓組織への取り込み効率についての定量的な評価や、取り込まれた後の病因物質の挙動については未だ不明な点が多いことから、最終年度においてこれらの点を解明したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、メタボリックスイッチングにおいて病因物質を体内から肝臓組織へ誘導する分子として、ApoEとIgGとをポリエチレングリコールリンカーで結合させた複合体が有効であることを見出してきた。最終年度では、定量的な解析や、メカニズムについての基礎データの充実を図る。リウマチ疾患やアミロイドーシスの系において得られた成果を学術論文へ投稿することを目指し、共焦点レーザー顕微鏡による肝臓細胞への取り込み効率の定量化、ならびにコンペティションアッセイによるリガンド特異性について検討する。さらに、複合体によって取り込まれた病因物質の分解やその後の代謝経路についても詳細なデータ解析が必要であることから、肝臓組織内部での病因物質の分解挙動についても詳細に検討し、メタボリックスイッチングとして提唱した薬理メカニズムの基礎的データの構築を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度において見出したナビゲータ分子の設計に基づいて25年度で実験を進めた結果、病因物質の誘導効果を再現性良く認めることができた。このため、25年度においてナビゲータ分子最適化の実験に予定していた計上額を割り当てること無く成果が得られため、余剰分は次年度でのin vivo実験のデータ充実に充当することとした。 25年度までに得られた分子設計によって、病院物質を効率よく目的臓器へと誘導できる可能性が見出されたことから、最終年度は、in vivoでの実験データの充実と、in vitroにおいて、設計した分子による代謝メカニズムの検討について25年度での繰越予算を充当する。
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