研究課題/領域番号 |
24659055
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中西 剛 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (50303988)
|
研究分担者 |
永瀬 久光 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40141395)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 環境毒性学 / 有機スズ / 核内受容体 / 付着生物 |
研究概要 |
汚損付着生物として知られているシロスジフジツボ、ムラサキイガイおよびミドリイガイからRNAを抽出し、それを鋳型にcDNAを作成した。この内、シロスジフジツボおよびムラサキイガイにおいてretinoid X receptor (RXR)のDNA結合領域(DBD)配列の増幅に成功した。さらにDBD配列を基に3'RACE法により、DBD より 3'側に存在するリガンド結合領域(LBD)配列の解明にも成功した。明らかになった配列情報からアミノ酸配列を予測し、他動物種と比較を行った。その結果、ムラサキイガイRXR LBDはヒトと約80 %の相同性があることが確認された。また、巻貝類とは約90 %の相同性を有している事が確認され、ムラサキイガイRXRのアミノ酸配列は巻貝類RXRに近い配列である可能性が示唆された。一方で、シロスジフジツボRXR LBDはヒト、巻貝類のどちらに対しても約60 %の相同性しか有していなかった。また、他の生物種に対しても同程度の相同性であり、データベース上にはシロスジフジツボRXRと特に相同性が高い配列は認められなかった。シロスジフジツボについてはRXR LBD とグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質を発現させるプラスミドを作製し、これを大腸菌内で発現させることで組換えタンパク質を作製可能であることを確認した。また、酵母の転写因子である GAL4のDBDとRXR LBDを融合したキメラタンパク質を発現させるプラスミドを作製した。これにより、シロスジフジツボRXRのリガンド結合能および転写活性化能の評価が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
汚損付着生物における核内受容体のクローニングに関しては、RXR全長のクローニングは完了していないものの、シロスジフジツボおよびムラサキイガイにおいてはRXR LBD配列の解明まで進んでおり、5'RACE法を行うことで全長配列の解明の目処が立っている状況である。また、各種リガンドの受容体結合試験についても、各生物のRXRの組換えタンパクの作製が完了しており、現在リガンド結合能の評価を行っている状況である。転写活性化に関する検討は平成25年度に行う計画であったが、シロスジフジツボに関しては、計画を前倒ししてGAL4 DBDとRXR LBDを融合したキメラタンパク質を発現するプラスミドを作製し、すでに評価可能な状況にある。このように、当初の計画と前後している部分があるものの、研究の進行に大きな問題はなく、申請書に記載した研究目的を達成できている状況にあると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、5'RACE法によりRXRの全長クローニングを完了させるとともに、peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)のクローニングを試みる。RXRの全長クローニングを完了した後、それを基に精製タンパク質を作製し、RXRのDNA 結合性および二量体形成性等、核内受容体としての特性の検討を進める。一方で、既にシロスジフジツボおよびムラサキイガイにおいてはRXR LBD配列の解明は完了しているため、RXRのリガンド結合能および転写活性化能を評価する体制は整っている。受容体結合試験およびレポーターアッセイによりどのような化合物がリガンドとなるかを明らかにする。これらの結果をまとめ、付着生物で発現するRXRがどのような機能を持つかを解明し、哺乳動物RXRと比較する。PPARについてもクローニングできたものについてはRXRと同様に検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
RXRについては概ね順調に解析が進んでいるが、PPARについては遺伝子クローニングに少し手こずっているため、繰り越した研究費により受託サービス等も活用して、精力的に進めていく予定である。
|