慢性腎臓病患者の網羅的メタボローム解析で見つかったマーカーの個別測定系の立ち上げとして1-メチルアデノシンに対するLC-MS測定法、モノクローナル抗体作製によるELISAキット開発を行い臨床で手軽に多くのサンプルを測定してそのバリデーションを各種病態で検討した。その結果、心臓血管外科において、体外補助循環を用いて大動脈弓部置換術を施行した患者では1-メチルアデノシンの増加は再灌流後早期に濃度上昇を認め、またその増加は現在早期腎不全マーカーといわれている尿中KIM-1の増加よりも早期に認めた。一方、血清クレアチニンは測定した術中には濃度変化を認めなかった。 また一般住民1100人を対象とした大迫地域(現岩手県花巻市)のコホート研究調査において採取した血液の血清中1-メチルアデノシン濃度を測定し、予後との関係について検討した。その結果、m1A血中濃度が高い一般住民7年後には血圧や腎機能、 その他の要因に関係なく死亡率が約7倍も高い事が確認され、m1Aは生命予後のマーカーでもあることが明らかとなった。 本研究により高感度ELISA系が立ち上げられ、心臓血管外科手術において早期に腎機能のダメージを検出できること、また一般住民のコホート研究から血中濃度が高い一般住民7年後には血圧や腎機能、 その他の要因に関係なく死亡率が約7倍も高い事が確認され生命予後のマーカーでもあることが明らかとなったことは本研究の目標が達成されたと考えられる。さらに今後日本発の新たなバイオマーカーと測定系の創出という新たな診断技術の創出につながると考えられた
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