近年、コレステロールの消化管吸収を担い脂質異常症治療薬エゼチミブの薬効標的であるNPC1L1に関する研究が進み、コレステロール輸送以外の多彩な生理機能が明らかになりつつある。本申請研究は、その細胞内局在・組織分布、類縁分子NPC1に関する報告やウィルス存在下におけるNPC1L1の機能不全などの知見から立案した、「NPC1L1をはじめとする消化管の脂溶性栄養物質トランスポーターが、消化管からのウィルス侵入における細胞膜受容体として働く」という仮説を実証することを目的としている。得られる成果は、基礎研究としての重要性のみならず、ウィルス感染リスクの個人差予測やウィルス感染対策などの臨床的側面においても大きな重要性・発展性を持つことが期待される。 研究二年度にあたる本年度(平成25年度)には、引き続き、消化管モデル細胞系および動物モデルを用いたウィルス感染経路の探索を行うための準備を進めた。 本研究において研究対象としている脂溶性栄養物質トランスポーターのNPC1L1、SR-BI、CD36の3つの遺伝子を入手し、哺乳類細胞系への強制発現に用いる発現ベクターを構築することができた。さらに、得られた発現ベクターを培養細胞に導入し、ウェスタンブロットを行った結果、期待される分子量のバンドを検出することに成功した。現在、脂溶性栄養物質トランスポーターの高発現細胞にGFP発現ウィルスを感染させ、細胞におけるGFPタンパク質の発現量を定量的に解析することにより、アデノウィルス感染効率の評価を行う実験を進めている。 動物モデルを用いた解析に関しては、NPC1L1遺伝子欠損マウスの作成、および、NPC1L1発現アデノウィルスを用いた肝臓特異的一過性トランスジェニックマウスの作成に成功した。現在は、NPC1L1遺伝子の有無や阻害剤処理の有無による感染効率の違いに関する検討を進めている。
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