研究課題/領域番号 |
24659072
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
細谷 健一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70301033)
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研究分担者 |
久保 義行 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 講師 (20377427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロスタグランジン / 血液脳関門 / 脳内炎症 / プロスタグランジン合成酵素 / 神経伝達物質 / 血液脳脊髄液関門 / リポ多糖 / PGE2 |
研究概要 |
本研究では、申請者が予備的に明らかにした「炎症時における脳関門プロスタグランジン排出輸送の減弱」について、その分子的な要因を解明すると共に、それを制御するための戦略を構築することを目的としている。一般に、炎症時における脳内プロスタグランジンE2(PGE2)濃度上昇にはPGE2合成酵素が関与すると言われている。実際、PGE2脳内濃度上昇への各種プロスタグランジン合成酵素の重要性を評価するため、それらに対するポリクローナル抗体を能動免疫法によって作出した。これらの中で、リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)およびミクロゾーム型プロスタグランジンE合成酵素(mPGES)-1について高い特異性が示された。本抗体を用い、マウス脳切片をサンプルとした免疫組織化学的解析を結果、L-PGDSは脳実質細胞よりも脳室を覆う軟膜・上衣細胞にて強いシグナルが検出され、mPGES-1はアストロサイトや軟膜・上衣細胞においてシグナルが検出された。さらに、炎症を惹起させるリポ多糖(LPS)を投与したマウスを用い解析を行った結果、血液脳関門(BBB)の実体である脳毛細血管内皮細胞におけるmPGES-1発現量上昇が示された。以上の結果から、炎症時脳におけるPGE2濃度上昇への脳毛細血管内皮細胞に発現するmPGES-1の関与が示唆された。今後、脳内PGE2濃度恒常性維持への合成と排出それぞれの寄与を明らかにする予定であり、今回作成した抗体は有用なツールとなると期待される。なお、本抗体を用いた研究成果の一部を学術誌上にて発表した(J. Neurochem. 123, 750-60 (2012); J. Pharmacol. Exp. Ther. 343, 608-16 (2012))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では炎症時の脳関門輸送機構のみ着目していたが、脳内の内因性PGE2量を考えるにあたり、合成過程の変動も無視できないと判断されたため、作出から評価までおおむね半年以上かかるポリクローナル抗体作成に初期に取り掛かった。解析を行うためのツールは万全となり、次年度における速やかな解析が可能と期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的である炎症時における脳内PGE2量上昇の分子メカニズム解明について、合成・排出を評価するにあたるツールは、今年度の研究にておおむね揃えられた。今後は、それらのツールを駆使し、その分子的要因解明と制御、特に脳関門の役割を解明する方針にて研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はポリクローナル抗体作成を中心に行い、機能解析については必要最小限に抑えたため、次年度使用額が発生した。本研究費と平成25年度分請求の研究費とを合わせ、機能的解析に必要な試薬・プラスチック器具などの消耗品にて使用する。また、研究成果発表などを想定し、旅費・その他(雑誌投稿料など)にも使用する予定である。
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