研究概要 |
新薬が承認された後、多くのヒトに投与されて初めて重篤な副作用発症によって販売が中止される事例が少なくない。その発症頻度は低く、薬の投与量に依存せず、動物モデルが無く、予測試験系が無いことが特徴である。最近の大規模な調査により、組織適合性抗原(HLA)に特定の遺伝多型を有するヒトが、極めて高い確率で重篤な肝障害を発症することが次々と明らかにされつつある。例えば、古くからdug hypersensitivity反応として、重篤なスティーブンジョンソン(SJS)症候群や中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis,TEN)の発症で知られるカルバマゼピンは、患者の全ゲノム配列の網羅的比較研究から、HLA-B*1502のみならず,HLA-B*1511,HLA-A*3101,HLA-DR1*1602やHLA-Cw*0801遺伝子多型との相関が様々な人種において、矢継ぎ早に報告されている。しかし、HLAの遺伝多型は極めて種類が多く、大きな人種差も存在するために、海外での結果を我が国に外挿することも困難である。こうしたHLAの多型に起因すると考えられる重篤な副作用を、開発段階で予測することは極めて困難である。さらに、医薬品開発において申請までに治験に関わる人数は、多くても数千名である。よって、0.1%以下の確率で発症する重篤な副作用発症を検出することは事実上不可能である。本申請では、未だ全く確立されていないhypersensitivityについて、第一に発症動物モデルを確立し、その原因となる共通因子の究明を目的とする挑戦的な内容である。
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