臨床で使用されている薬においても、極めて稀な頻度で重篤な皮膚障害であるスティーブンジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)を発症する場合がある。これらには実験動物のモデルが存在せず、予測が極めて困難な副作用とされている。代表的なSJS惹起薬であるカルバマゼピン(CBZ)やフェニトイン(DPH)もそれらの薬の一種である。申請者は、1週間のカルバマゼピンの経口連投によって、重篤な副作用症状を起こす投与法を正常Balb/cマウスにおいて確立出来そうな段階まできた。そこで、この投与法によるマウスモデルを確立し、免疫関連因子の網羅的解析を行い、原因因子の特定を行うことを目的として研究を行った。CBZについて、様々な投与方法を正常Balb/cの雌性マウスで試みた。その結果、極めて少数の動物に背部や腹部に重度の皮膚炎症を認めたが、再現性を得られる実験条件を確立するには至らなかった。しかし、ヒトでも稀に報告がある重篤な肝障害を再現良く惹起させる試験系を確立することができ、その発症機序にTh17が関与することを報告した。さらに、DPHについて、正常C57BL/6の雄性マウスにおいて、同様な重篤な皮膚症状を得る事ができた。しかし、これについても、再現性がある投与条件を見いだすことができなかった。また、DPHについても、体内動態を考慮した実験の途中に、DPH誘導性肝障害マウスを初めて得ることができ、その機序を解析した。その結果、reactive oxygenなど(ROS)が主に関わり、その後にTh17が関与する機序を明らかにできた。以上、SJS/TENの動物モデルを確立するまでには至らなかったが、CBZおよびDPHの重篤な肝障害動物モデルを提供することができた。今後さらに免疫/炎症因子の探索によって有用なhypersesitivityモデルに改良するための検討が必要である。
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