本研究では肝臓中miRNAの発現量が変動した際に薬物代謝酵素群が受ける影響を明らかにすることを目的としている。肝臓特異的にかつ豊富に発現するmiR-122は肝障害児に発現が低下することが報告されている。その際の薬物代謝能への影響を明らかにするためにmiR-122に対するアンチセンスオリゴを肝臓特異的送達脂質ナノ粒子に封入し、マウスに尾静注したところ、肝臓中miR-122の顕著な低下が認められ、ノックダウンに成功した。その肝ミクロソーム画分では、コントロール群と比べてミダゾラム水酸化酵素活性やトルブタミド水酸化酵素活性の上昇と、モルヒネグルクロン酸抱合活性の低下が認められたことから、シトクロムP450やUDP-グルクロン酸抱合活性がmiR-122発現変動により影響を受けることを明らかにした。 以前の研究でretinoid X receptor α (RXRα)がmiR-34aによって調節を受けることを明らかにしている。最近、RXRαが肝線維化に対して保護作用を有することが報告されたことから、miR-34aをノックダウンすることで肝線維化を抑制できる可能性を検討した。四塩化炭素投与による肝線維化モデルマウスを作成したところ、肝臓中miR-34a発現量の有意な上昇が認められ、脂質ナノ粒子に封入したmiR-34aに対するアンチセンスオリゴを尾静注することでmiR-34a発現量はコントロールレベルまで低下した。さらに肝線維化の発症および進行が抑制されたことを、組織学的検査ならびに線維化マーカー発現レベル等の解析により明らかにした。 以上、これまで薬物代謝酵素の発現制御におけるmicroRNAの役割は細胞等を用いたin vitro実験で明らかにしてきたが、本研究によりin vivoにおいてもmicroRNAが薬物代謝能の制御に重要な役割を担っていることを明らかにした。
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