研究課題
近年、医薬品領域においては、ナノマテリアルをキャリアあるいは添加剤として配合した医薬品や、そのものの薬効を利用したナノメディシンが期待されている。一方で、ナノマテリアル特有の革新的機能が、予期しにくい毒性を発現してしまうことが懸念されている。中でも “発生毒性”は、医薬品の安全性評価には必須であり、数世代にわたって毒性が継承されてしまう危険性があることからも、ナノマテリアルの安全性確保研究における最優先かつ最重要課題となる。一方で、既に数多くのナノマテリアルの医薬品応用が進むと共に、粒子径の縮小化・表面修飾体など、莫大な種類の新規ナノマテリアルが続々と開発され続けている。これらを、既存のマウス・ラットを用いた手法により発生毒性を評価した場合、時間・労力が膨大にかかることから、in vivoとの整合性に優れたハイスループットなin vitro発生毒性試験法(代替法)の確立が切実な課題となっている。本申請研究では、有害性が未解明な医療用のナノマテリアルの発生毒性(特に胎仔への影響)をin vitroで評価可能な、in vitro発生毒性試験法(代替法)の開発と、代替法の整合性や確度を科学的検証・最適化することを目指す。本年度は、申請者らが先駆けて、流産や胎仔発育不全などの発生毒性を呈し得ることを明らかとしてきた非晶質ナノシリカを用いて、in vivoにおける発生毒性メカニズムを検証することで、代替法開発に資する情報の収集を試みた。その結果、好中球を欠損することで、ナノシリカによる胎仔毒性が悪化する傾向が観察された。即ち、ナノシリカといったナノマテリアルの胎仔毒性を評価するにあたり、免疫細胞などの存在を考慮にいれた代替法の開発も必須と考えられた。
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