研究課題
多剤耐性菌感染症に対する対策は、ヘルスケアにおいて緊急かつ最重要な解決すべき課題の一つである。本研究では、感染時に過剰産生されるシグナル分子であり、抗菌作用を有するNOに着目し、NOの創剤化を試みた。加えて、これまでの研究成果より、感染症時に増加するα1-酸性糖タンパク質であるAGPのCys-149がNOの標的分子になり、S-ニトロソ(SNO)化されることで抗菌活性を獲得することを明らかにしていることから、生体内でNOを持続的に放出するデリバリー担体として、AGPを利用することを考えた。本年度は、SNO-AGPの多剤耐性克服剤としての可能性を検討するため、多剤耐性菌の多剤排出ポンプやバイオフィルム形成に対する抑制作用およびSNO-AGPと既存の抗菌剤との併用効果を検討した。多剤耐性菌である肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対するSNO-AGPの抗菌活性を既存の抗菌剤と比較したところ、SNO-AGP のIC50は上記3種の菌に対してそれぞれ0.06 μM、3 μM及び1 μMであり、他の抗菌剤と比較しても低濃度で細菌の増殖を抑制した。SNO-AGPは、多剤排出ポンプの基質であるローダミン6Gなどの細菌内蓄積性を有意に上昇させ、この効果はSNO-AGPが増殖抑制効果を示さない低濃度でも観察されたことより、SNO-AGPは、これらを基質とする多剤排出ポンプを制御する可能性が示唆された。加えて、この他剤排出ポンプがAcrAB-TolCであることを突き止めた。また、SNO-AGPは肺炎桿菌のバイオフィルム形成を有意に低下させた。本検討結果より、SNO-AGPは、多剤耐性菌のバイオフィルム形成や多剤排出ポンプAcrAB-TolCを抑制し、併用する既存の抗菌剤の活性を相乗的に増強させ、耐性克服効果を発揮する可能性が示唆された。
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