研究課題/領域番号 |
24659078
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
斎藤 嘉朗 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 部長 (50215571)
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研究分担者 |
前川 京子 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (70270626)
近藤 俊輔 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (90546201)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 副作用 |
研究概要 |
「手足症候群」は、ソラフェニブを始めとする多くの抗がん剤で用量制限毒性となっているが、その発症機序は明確でなく、その発症と重篤性を予測することは、現在不可能である。本研究は、1)主として培養細胞を用いた逆方向多層的オミックス解析により、手足症候群を発現する抗がん剤群と発現しない抗がん剤群で異なる代謝変化を示す経路を明らかにし、その発症機序を解明すると共に、発症の個人差の機序を明らかにすること、2) ソラフェニブ投与患者血液を用いたゲノム・メタボローム解析により、1)で見出された発症と相関するバイオマーカーを検証し、発症予測を可能とすることを目的とする。 三年計画の初年度である平成24年度は、ヒト培養角化細胞株を用いて、手足症候群を発現しやすいソラフェニブ、カペシタビン、または発現しにくいゲフィチニブ、イリノテカンの各抗がん剤に関し、最高血中濃度を目安として細胞に添加した。これらの細胞の抽出物およびRNA画分を用いて、メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を行った。また、臨床研究のための倫理承認を取得後、ソラフェニブ投与患者からのゲノムDNA(投与前1回採取)、血漿(投与前1回、治療開始後最大4回採取)および副作用情報を含む臨床情報の収集を開始した。平成25年3月末日までに8症例を収集し、これまでに外国人においてソラフェニブによる手足症候群発現との関連報告があるVEGFA,FLT4, UGT1A9の各2多型、TNFA, HIF1A,CYP3A4,CYP3A5, ABCB11の各1多型、合計11多型に関してタイピングを行った。また血漿を用いたメタボローム解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ヒト角化培養細胞株を対象にしたメタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を行い、手足症候群発症に関連する代謝経路の解明を行うこと、またソラフィニブ投与患者試料(ゲノムDNAおよび血漿)の収集開始を目標とした。ヒト角化培養細胞株を対象にした解析では、手足症候群を発現しやすい抗がん剤で特異的に変化する細胞内代謝経路の絞り込みにさらなる検討が必要であり、若干研究は遅延している。一方、ソラフェニブ投与患者試料の収集は既に開始されており、さらにこれまでに手足症候群発現との関連報告がある遺伝子多型の解析、およびメタボローム解析を開始するなど、臨床試料を用いた解析は予定以上に進んでいる。従って、総合的には、概ね順調に研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
二年度となる平成25年度は、抗がん剤の種類を増やして、ヒト培養角化細胞を対象にした手足症候群関連代謝経路の検証(主としてメタボローム解析)を行う。さらに、手足症候群関連代謝経路上の遺伝子に関し、機能変化が報告されている多型を中心にパイロシーケンシング法等より、さらに機能変化を有する多型が知られていない遺伝子に関しては、主として直接シーケンシングにより、それぞれ解析し、代謝物レベル変化と相関する遺伝子多型を同定する。臨床試料を用いた解析については、ソラフェニブ投与患者試料および臨床情報の収集、これを用いた遺伝子多型解析およびメタボローム解析を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究経費の内訳は、消耗品、研究補助のための派遣費用、国内学会参加のため旅費およびその他(振り込み手数料等)であり、本研究遂行において必須の経費である。消耗品に関しては、患者からの採血用(採血管等)、ヒト角化細胞の培養用(細胞、ディッシュ、培地、抗生物質等)、メタボローム解析用(分離用カラム、溶媒、試験管等)、遺伝子多型解析用(PCR酵素、シーケンシング試薬等)の試薬・器具である。研究補助のための派遣は、のべ1ヶ月を予定している。旅費は、研究成果を公表するために重要な国内学会(日本薬学会等)への参加費用である。その他の費用としては、振り込み手数料等を計上した。なお、全体の研究費の90%を超える費目はない。
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