研究課題/領域番号 |
24659078
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
斎藤 嘉朗 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 部長 (50215571)
|
研究分担者 |
前川 京子 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (70270626)
近藤 俊輔 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (90546201)
|
キーワード | 抗がん剤 / 副作用 |
研究概要 |
手足症候群を引き起こす医薬品のうち、細胞傷害性のものについては多くの細胞内分子変化が認められやすく、手足症候群に特化したメタボロームの相違を見いだすことが困難であることから、平成25年度は分子標的薬に絞った解析を行った。まず医薬品選択のため、重篤な手足症候群の自発報告件数を調査したところ、2008年から2013年の6年間で、ソラフェニブが計301件と最も多く、次いでラパチニブ、レゴラフェ二ブ、スニチニブであった。また、年平均報告数ではレゴラフェニブが99件で最も多く、次いでソラフェニブ、ラパチニブ、スニチニブの順であった。この結果に基づき、試薬が調達可能であった、ソラフェニブとスニチニブを「手足症候群を起こしやすい医薬品群」、イマチニブ(年平均0.5件)、ゲフィチニブおよびボルテゾミブ(共に発症報告なし)を「起こしにくい医薬品群」として、ヒト上皮様細胞癌由来細胞株A431をそれぞれで18時間処理し、メタノール抽出後、メタボローム解析に供した。酸化脂肪酸では、PGE2や5-HETE等の炎症性アラキドン酸代謝物が見いだされており、またホスファチジルコリンに加え、多くのホスファチジルイノシトールやセラミド分子種等が検出されており、現在、ソラフェニブとスニチニブで特異的な変化が認められる分子種の探索を進めている。また、ソラフェニブ投与患者からのゲノムDNAと血漿、および副作用情報を含む臨床情報の収集を継続した。平成26年3月末日までに累計で19症例(平成25年度として11例)を収集し、外国人においてソラフェニブによる手足症候群発現との関連報告がある計11多型に関してタイピングを行った。また血漿を用いたメタボローム解析も継続した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、抗がん剤の種類を増やして、ヒト培養細胞を対象にした手足症候群関連代謝経路の探索・検証(主としてメタボローム解析)を行うこと、臨床試料を用いた解析については、ソラフェニブ投与患者試料および臨床情報の収集、これを用いた遺伝子多型解析およびメタボローム解析を継続することを目標とした。培養細胞の解析については、昨年度の経験に基づき、分子標的薬に解析対象を絞り、ヒト培養上皮細胞株を用いたメタボローム解析を行った。炎症および抗炎症作用を有する分子を含め、非常に多くの分子種が測定されており、現在、手足症候群を発症しやすい医薬品群で特異的に変化が認められる代謝物の探索を行っており、目標からは若干の遅れが認められるものの、研究は順調に進行している。また、ソラフェニブ投与患者試料も昨年度以上の症例数が収集され、さらにこれまでに手足症候群発現との関連報告がある遺伝子多型の解析、およびメタボローム解析も問題なく遂行されていることから、総合的に、概ね順調に研究は進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
三年度となる平成26年度は、ヒト培養皮膚細胞を用いた手足症候群を起こしやすい医薬品群で特異的に変化する分子群(主としてメタボローム解析による)の同定とその情報を基にした「手足症候群関連代謝経路」の同定を行い、発症機序を考察する。臨床試料を用いる解析では、ソラフェニブ投与患者試料および臨床情報の収集を行うと共に、既に関連が報告された候補遺伝子多型の解析およびメタボローム解析を継続する。さらに培養細胞を用いた結果から関与が推定された代謝経路上の酵素(群)の遺伝子多型解析を行う。これらの解析から発症と関連が認められる多型・分子群を同定し、発症を予測するバイオマーカーとしての有用性を考察することを目標とする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年3月の研究補助員派遣費用の支払いが、平成26年4月のため。 平成26年4月に、スイス・ベルンにて開催された「薬物過敏症国際会議」への出席のため 上記、研究補助員派遣費用は、383,040円 上記、国際学会への出席のための費用は、274,470円 で合計、657,510円となる。残りの繰越金額を含めた平成26年度の研究経費の内訳は、消耗品、研究補助のための派遣費用、学会参加のため旅費およびその他(振り込み手数料等)であり、本研究遂行において必須の経費である。消耗品に関しては、患者からの採血用(採血管等)、ヒト皮膚培養細胞の培養用(細胞、ディッシュ、培地、抗生物質等)、メタボローム解析用(分離用カラム、溶媒、試験管等)、遺伝子多型解析用(PCR酵素、シーケンシング試薬等)の試薬・器具である。研究補助のための派遣は、のべ1ヶ月を予定している。旅費は、研究成果を公表するために重要な学会(日本薬学会等)への参加費用である。その他の費用としては、振り込み手数料等を計上した。なお、全体の研究費の90%を超える費目はない。
|