膵島移植での移植組織の不足を補うインスリン産生組織を得る為、組織内幹細胞を膵島へ分化転換させる新規培養法を開発する為の基礎的研究を行った。膵障害後の再生現象で、膵上皮系非内分泌細胞が膵島に分化する可能性が示唆されている。Sox9-GFP遺伝子改変マウスから分離した細胞を用い、培養条件下での細胞運動と極性の制御機構の解明を試みた。 上皮細胞マーカーSox9で成体膵細胞をソートしたところ、約0.1~0.3%が分取でき、これらの細胞を、R-spondin1等を用いた3D培養法で継代培養させ、約6カ月間継続して増殖させることができた。増殖中の細胞を顕微鏡下で観察したところ、Sox9-GFPの発現輝度において細胞個体差を認めたが、GFP発現レベルは、培養容器内で観察できる細胞の増殖や、細胞運動と必ずしも一定の関連性を認めなかった。次に、これらの細胞を、GFPの発現レベルにおいて、強・弱のバッチに分け、分化培地内で立体培養したところ、分化培養後にインスリン産生の指標としてのmRNA発現を認めたが、当初予想したほどのGFPの減衰は観察されなかった。また、トランスウェル・チャンバー内に、これらの細胞を培養し、チャンバーの外側に、マウス膵から分離培養した間質系細胞を入れ、チャンバー内から下側(外側)に移動する細胞を確認する方法を用いて、細胞の運動を解析した結果、1~2%の細胞に移動が認められた。今後、直線培養坑道容器を用いた、細胞レベルの動態観察によって、分化状態と細胞極性・運動を制御するWntシグナル伝達との関連を検証していく。これにって、膵再生における細胞動態の姿を明確に把握できると考える。 極性因子の発信源は血管と考えており、既に本研究に先行する知見として、膵島再生と成熟を促進する血管内皮細胞の応用法を知財化した。本研究課題の実施中、国外特許出願し、米国及びEUでは今年度中に成立する。
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