研究課題/領域番号 |
24659085
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉川 知志 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90244681)
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キーワード | クロマチン再構成複合体 / 神経細胞分化 |
研究概要 |
平成24年度に引き続き、ゼブラフィッシュdpf1 mRNAの発現部位の解析をin situハイブリダイゼーション(ISH)法により行った。ホールマウント標本による解析に加え、凍結切片を用いてより詳細な発現解析を行った。その結果、間脳や延髄腹側部などに特に強い発現が認められる一方で、終脳外套や中脳視蓋など発現が無いか極めて弱い領域があることが判った。これは、dpf1以外にもnpBAFの構成サブユニットとなり得る類似分子もしくはアイソフォームの存在を示唆しており、現在、候補分子を検索している。 また、平成24年度に見出した転写バリアントの発現パターン解析を行った。配列の異なる領域が小さく特異的なプローブを作成できないバリアントもあったが、他種のホモログと相同性の最も高い、当初より予測した転写産物が主要な転写産物であり、各バリアント間にも明らかな発現パターンの違いは見出されなかった。 上記の転写産物の発現解析の結果を元に、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)あるいは合成RNAの受精卵注入による遺伝子ノックダウンもしくは強制発現系によるDpf1の機能解析に着手した。現在、各種の蛍光トレーサー発現トランスジェニックゼブラフィッシュ系統を用いて、ノックダウンおよび強制発現による神経系の発生に対する影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に報告したように、複数の転写開始点を伴う転写バリアントの存在が新たに明らかになったため、その発現解析を行った。バリアントの中にはDNA結合モチーフの一部を欠くものも含まれており、バリアント間での機能上の違いが予想され、各バリアントの発現パターンやDNA結合能の違いなどの分子レベルの知見が個体レベルでの機能解析を行う上でも極めて重要であると考えたためである。さらに、遺伝子ターゲティングに用いるMOや強制発現に用いる合成RNAの配列決定のためには、翻訳開始点やエクソン/イントロン構造の情報が必要となる。そこで、当初計画に予定していなかった転写バリアントの発現パターン解析を行った上で、機能解析の対象とする主要な転写産物の同定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように当初の研究計画に比べて進捗状況が遅れたため、研究期間を1年間延長し、交付申請時の研究計画を継続して遂行する。これまで取り組んできた、[1]ゼブラフィッシュDpf1の発現パターンの詳細な解析および[2]dpf1-tTA-GFPトランスジェニックフィッシュのGFP発現パターン解析の結果を踏まえて、[3]遺伝子ターゲティングによるDpf1の機能解析を進めていく。ただし、ゼブラフィッシュに関する解析を優先的に集中して進める事とし、申請時の実施計画に記した[4]マウスDPF1の中枢神経系における発現パターン解析、および[5]マウスDPF1の中枢神経系における機能解析については、研究全体の進捗状況を見て推進の方策を判断することとする。神経系に蛍光トレーサー蛋白質を発現する、各種のトランスジェニックゼブラフィッシュの受精卵に対し、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)あるいは合成RNAの注入による遺伝子ノックダウンもしくは強制発現を行い、dpf1の発現変異による神経系の発生に生じる障害を解析する事でその機能を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に予定していた遺伝子ターゲティングによる個体レベルでのDpf1の機能解析に関して、複数の転写開始点を伴う転写バリアントの存在が新たに明らかになったために、ターゲティングに要するオリゴヌクレオチド配列の候補が増えた。全候補を用いて実験する予算がないため、転写バリアントの発現解析を行い、候補の絞り込みを行った。その結果、当該オリゴヌクレオチド関連予算の執行が本年度中に完了できなかった。 Dpf1の遺伝子ターゲティングによる個体レベルでの機能解析と北米神経科学学会での成果発表を次年度に行うこととし、未使用額はそのための経費に充てる。
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