研究課題
近年NAD+依存性脱アセチル化酵素SIRT1は、その機能異常が糖尿病、脂質異常症などの代謝性疾患を引き起こすこと、逆に、レスベラトロールなどのSIRT1活性化低分子化合物が糖尿病や肥満を抑制することが明らかになり、長寿遺伝子として注目を浴びている。一方で最近SIRT1は、胚発生期においても血管形成などへの関与が明らかになり、発生期におけるSIRT1の役割が注目されている。そのひとつとして背骨などの繰り返し構造の基となる体節の形成過程で中心的な役割を果たしているHes7タンパク質との結合が報告されている。しかし、その生理的意義は不明のままである。本研究課題では、SIRT1活性化が胚・個体発生期、特に体節形成においても正の効果を示すのか、すなわち、胚・個体発生期に薬理学的もしくは遺伝子工学的にSIRT1活性を上昇させれば、催奇形性物質投与による奇形仔の出生確率を減少させることができるかを明らかにすることを目標に研究を行っている。前年度に作製した体節形成が行われる未分節中胚葉特異的にSIRT1を欠損するコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを用いて、未分節中胚葉でのHes7 mRNAの発現パターンをin situハイブリダイゼーション法により検出した。その結果、Hes7 mRNAはSIRT1を欠損した状況でも振動することを確認したが、その発現量は野性型マウスに比べて上昇していることを明らかにした。また、培養細胞レベルでHes7タンパク質は、SIRT1脱アセチル化活性依存的に安定性が変化することも明らかにした。今後は、SIRT1 cKOマウスに見られた催奇形性物質に対して抵抗性を示すという表現形とHes7 mRNA量上昇にどのように関連性があるのかを解明し、体節形成におけるSIRT1の役割を明らかにする。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
FEBS Journal
巻: 281 ページ: 146-156
10.1111/febs.12582