研究実績の概要 |
平成26年度は、平成25年度の結果をもとに、培養した鰓後体C細胞に対してインスリン産生細胞および膵臓に分化させる遺伝子を導入後、細胞の変化をリアルタイムPCR、ELISAおよび蛍光染色法などにより調べた。
1.平成25年度の結果から、Pdx1とMafAを導入した培養C細胞がインスリン遺伝子、インスリンタンパクを発現合成していることは明らかにされたが、C細胞全体の数と比較するとまだ1~2%しか分化転換されていなかった。 これらの細胞はカルシトニンを発現する細胞、カルシトニンとインスリンを発現する細胞およびインスリンを発現する細胞と3種類の細胞が混在していた。 そのため、このままでは糖尿病マウスの病態改善には使用できないと考え、さらにより多くの細胞がインスリンを発現する細胞に分化転換する方法を模索した。 ここで、Nkx2.2 遺伝子はβ細胞の発生に必須であり、Rfx6遺伝子は膵臓の発生に重要な遺伝子である。 これらの遺伝子を培養C細胞に導入することでさらに作成効率が上がるのではないかと考え研究を行った。 その結果Nkx2.2遺伝子を単独で導入した培養C細胞は2~3倍、インスリンの発現がコントロールと比較して増えていた。 様々な組み合わせで導入を行ったが、Pdx1とMafAを導入した場合に得られる15倍を超えることはできなかった。 また、Rfx6 遺伝子を導入した場合はインスリンの発現が見られなかった。 そのため、現時点ではPdx1とMafAを導入した場合が最も作成効率がよいと結論した。 2.1の結果を基に、今後遺伝子導入とは異なるアプローチでインスリン産生細胞の作成効率の増加を目指す。 腸内分泌細胞に対してFoxo1遺伝子を欠失させるとインスリン産生細胞が生じる(Nature Genetics 44, 406~412, 2012 doi:10.1038/ng.2215)ことが言われており、C細胞もFoxo1遺伝子の抑制によりインスリン産生細胞が樹立できる可能性がある。
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