近年増加傾向にある「隠れ糖尿病(空腹時の血糖値は正常でも食後の血糖値が正常値よりも上昇する病態で、糖尿病に移行する可能性が高い。)」は「初期の耐糖能異常症」に位置づけられ、食後の血糖上昇に応じた瞬時のインスリン分泌不足が原因と考えられている。また、その「耐糖能の低下」は迷走神経の切除により惹起されることが報告されているが、発症機構については不明な点が多い。そこで、野生型のマウスを用い、迷走神経がどのような神経回路を介して膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)と連絡しているのかを解剖学的に明らかにするため、その迷走神経終末を順行性に可視化できる条件を探索することにした。その神経標識で用いる順行性トレーサーとしては、Phaseolus vulgaris-leucoagglutinin(PHA-L)(電気泳動)、Biotinylated Dextran Amine(BDA)(電気泳動、圧力)、レポーター遺伝子としてLacZを用いた組換えアデノウイルス(Ad-LacZ)(圧力)、Fluoro-ruby(FR)(電気泳動、圧力)などが候補として考えられている。これまでのところ、BDAの電気泳動的な注入(生存期間2週間)による可視化(BDAの局在については、蛍光色素標識Streptavidinによる組織化学)を試みたが、膵臓内部への到達条件すら見つかっていない状況である。その他の順行性トレーサーの検討についてはこれからである。
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