研究課題
本年度は、前年度の成果を発展させて、以下の研究開発を行った。1) ゼブラフィッシュは透明でin vivo光学観察が容易であるが、皮膚の色素胞が蛍光観察の障害となる。3種類の色素胞のうち、黒色素胞は、青色光励起で強い緑~黄色の蛍光を発し、黄色素胞は青~緑色励起光により黄~橙色の蛍光を発する。従って、薬剤処理などで色素合成を阻害しても、残存する色素由来の強い蛍光により、蛍光1分子由来の微弱な蛍光は隠されてしまう。また、虹色素胞は強い偏光特性を持つ光の散乱体であり、皮下の観察に多大な悪影響を及ぼす。これら3種類の色素胞をすべて欠く透明ゼブラフィッシュCasper 系統は、病弱で飼育が困難であるとされていたが、飼育条件の最適化を行い、安定して採卵・繁殖できる条件を確立した。2) Casper系統受精卵に発現プラスミドを微量注入することで一過性発現の実験系を構築した。この系では、全身の細胞のごく一部で確率的に外来遺伝子を発現する。この系を用いて体表から100~200μm程度までは蛍光標識された小胞の輸送が観察できることが確認された。しかし、体組織による光波面の乱れの影響で分解能および結像性(=信号強度)は低下し、より深部の観察は困難であった。この系では、発現量と発現位置の調節は困難で、現時点では蛍光1分子の観察には成功していない。そのため、細胞特異的な発現プロモーターを用いた発現系をもつ系統を樹立中である。3) 2)で明らかとなった光波面の乱れの影響については、補償光学系の利用が有望であり、補償光学系の導入の検討を開始した。
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Scientific Reports
巻: 3 ページ: 2436
doi:10.1038/srep02436