研究課題/領域番号 |
24659093
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山形 要人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (20263262)
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研究分担者 |
田中 秀和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70273638)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロRNA |
研究概要 |
1)miRNAによるスパイン形態制御:arc mRNAの3’UTRに結合するmiRNA(二種類)をEGFPとともに遺伝子導入し、樹状突起スパイン形態を観察した。その結果、scrambled miRNAに比べ、miRNA導入ニューロンのスパインは明らかに細く長くなり、miRNAによって形態変化が起きることが明らかになった。また、miRNAを過剰発現するニューロンのarc蛋白質は、scrambled導入ニューロンと同じく樹状突起中に点状分布したが、その大きさは明らかに小さくなっていた。miRNA過剰発現の影響によるものと考えられた。 2)神経活動による翻訳抑制解除:myr-GFP-arc 3’UTR (wt)あるいは3’UTRのmiRNA結合配列を変異させたプラスミド (mt) をニューロンへ導入し、KCl刺激によってEGFP蛍光が増強するかどうかを調べた。その結果は、当初の予想と異なり、KClによるwtの蛍光強度の増加よりmtの強度変化の方が大きかった。この結果より、miRNAも脱分極によって誘導され、arc mRNAの翻訳を抑制すると考えられた。 3)超解像顕微鏡を用いたシナプスの観察:培養海馬ニューロンの神経終末をvGlut1抗体、スパインをGFP-fillにより描出し、構造化照明顕微鏡(SIM)を用いて観察した。通常の共焦点顕微鏡の画像より、スパインの輪郭が明瞭になり、シナプス間隙も観察することができた。 4)Arcと結合するユビキチンリガーゼの解析:arcと結合するユビキチンリガーゼとarcの二重免疫細胞化学を行った。Arcとユビキチンリガーゼは、培養ニューロンの樹状突起においてどちらも点状に分布し、一部のpunctaが重なることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の項目1)-4)について、計画通り解析を行った。予想外だったのは、arc mRNAを制御するmiRNAを二種類同定したが、どちらも同じRNAクラスター上にあり、同じ前駆体RNAから生成されることであった。miRNAの標的は非常に多様であることが知られているが、この知見は同じクラスター上のmiRNAが同じ標的mRNAを制御することを示しており、活動依存的な翻訳制御に関わる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1)miRNA前駆体ノックアウトマウスにおけるスパイン形態変化:arc mRNAの3’UTRに結合するmiRNAをノックアウトする。このmiRNAは、一つの前駆体からプロセシングにより生成されるため、この前駆体をノックアウトしたマウスを用いる。E18の海馬を培養し、シナプス形成後(DIV14以降)のスパイン形態を調べる 2)神経活動によるmiRNAの発現制御:arcの3’UTRに結合するmiRNAを同定しているので、それ自体が神経活動によって発現制御されるかどうかを調べる。ラットあるいはマウスを電気けいれん刺激し、経時的にmiRNAに対するプローブを用いてin situ hybridizationを行う。コントロールとしてはU6 small miRNAを用いる。さらに、TaqMan microRNA assayを用いてmiRNAの経時的変化を定量する。 3)ユビキチンリガーゼの樹状突起スパイン形態制御における役割:ユビキチンリガーゼを培養ニューロンに過剰発現させる、あるいはsiRNAを用いてノックダウンすることにより、樹状突起スパイン形態が変化するかどうかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:備品は購入しない。消耗品として、初代培養用の妊娠ラット(20万円)、培養器具(プラスチックプレート、ピペット、遠心管、観察のためのガラスボトムディシュなど)(10万円)、初代培養用の培養液やサプリメント(10万円)、遺伝子導入試薬、プラスチックチューブ・チップなど(10万円)、DIG-labeled probes(18万円)、TaqMan microRNA assay(6万円)が必要である。 旅費:国内学会で発表予定である(5万円)。 その他:英文校正(5万円)、投稿料・年会費・手数料など(6万円)。
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