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2012 年度 実施状況報告書

未知なる細胞容積感受性アニオンチャネルの分子構造基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24659095
研究機関富山大学

研究代表者

酒井 秀紀  富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60242509)

研究分担者 清水 貴浩  富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40353437)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード生理学 / 細胞・組織 / 蛋白質 / イオンチャネル / 細胞容積 / 浸透圧 / アポトーシス
研究概要

細胞容積の制御に寄与する容積感受性アニオンチャネル(VSOR)は、「細胞の生死を制御するイオンチャネル」として注目されているが、その分子実体は世界中の研究者の多大なる尽力にもかかわらず、明らかとなっていない。本研究では、VSORの特異的阻害薬を基盤とした光アフィニティーラベル体を作製し、独創的な蛋白質単離法により、VSORの分子実体を世界に先駆けて明らかにすることを目指す。本年度は、以下のような興味深い成果を得た。
1.VSOR特異的阻害薬のDCPIBの構造を基盤として合成した光アフィニティープローブを、VSORを機能的に発現しているヒト口腔類表皮癌KB細胞に作用させ(UV照射)、膜フラクションを調製後、ラべリング蛋白質をアビジンカラムにより単離し、LC/MS/MSによるショットガン解析を行った。その結果、VSOR候補としての可能性を有する約10種の膜貫通蛋白質がリストアップできた。
2.KB細胞およびKB細胞由来でVSORの機能的発現が顕著に減少しているシスプラチン耐性株(KCP-4細胞)から膜フラクションを調製し、二次元電気泳動を行い、KB細胞とKCP-4細胞との間で発現量が異なる蛋白質を調べた。KCP-4細胞よりもKB細胞での発現量が多いメインスポットを5種採取し、MALDI-TOFMSにより蛋白質の同定を行ったところ、このうちの1種(仮称:VC-1)が前述のショットガン解析で得られた蛋白質と一致していた。これまでにVC-1がVSORであるという報告はない。
3.KB細胞において、VC-1をsiRNAによりノックダウンし、低張負荷時に賦活化するVSOR電流に対する効果をホールセルパッチクランプ法により検討した。その結果、MP-1のノックダウンに伴い、VSOR電流が有意に減少することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、極めて重要な生理機能を有するにもかかわらず、その分子実体が未解明の容積感受性アニオンチャネル(VSOR)に着目した。これまでVSORの候補として様々な分子が提唱され、いずれもトップジャーナルに掲載されてきているが、後のノックアウトマウスでの実験によりそのすべてがVSORの分子実体ではないと否定されている。我々は、VSOR特異的阻害薬(DCPIB)の光アフィニティーラベル体を作製し、新規アプローチによりVSORの分子実体解明を目指している。本年度は、1) ラベリング蛋白質のLC/MS/MSによるショットガン解析、2) VSOR活性の異なる細胞株における各種蛋白質の発現量比較に基づく解析を行い、VC-1(仮称)を候補蛋白質の一つとしてピックアップした。興味深いことに、KB細胞におけるVC-1のノックダウンにより、VSOR電流が顕著に抑制されたことから、VC-1がVSORの分子実体またはVSOR活性の調節因子として機能している可能性が高い。以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後は、以下のように研究を推進し、VSORの分子実体解明を目指す。
1.VC-1をKCP-4細胞に過剰発現させ、VSOR電流が増大するかどうかをパッチクランプ法により検討する。また、VC-1の膜トポロジーを推定し、チャネルポアとなる可能性のある領域において様々な変異体を作成し、KCP-4細胞に過剰発現させる。そしてチャネルのイオン選択性が変化する領域を明らかにする。
2.VC-1をノックダウンしたKB細胞において、低浸透圧刺激後の細胞容積変化がどのような影響を受けるのかを検討する。またこの細胞において、シスプラチンがアポトーシスを誘導することができるのかについても検討する。
3.VC-1ノックアウトマウス由来の細胞株を用いて、VSOR活性の検討ならび上記2の検討を行う。
上記1~3の実験により、VC-1がVSORの分子実体であるのか、あるいはVSORの機能調節蛋白質であるのかを確定する。分子実体でなかった場合は、膜蛋白質精製法のさらなる改善や光反応基の異なるプローブの作製等を行い、ショットガン解析による候補蛋白質の再探索を行う。また、VC-1がVSOR調節因子であれば、VC-1とVSORが会合している可能性が高いので、VC-1に結合する蛋白質の探索・同定を行う。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、557円の残額が生じたが、これは研究計画の変更や進行状況の変化等によるものではなく、557円以下の物品の購入を希望しなかったためである。当該助成金は平成25年度の助成金と共に消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] TMEM16F is a component of a Ca2+-activated Cl- channel but not a volume-sensitive outwardly rectifying Cl- channel.2013

    • 著者名/発表者名
      Shimizu T. et al.
    • 雑誌名

      Am. J. Physiol. Cell Physiol.

      巻: 304巻 ページ: C748-C759

    • DOI

      10.1152/ajpcell.00228.2012

    • 査読あり
  • [雑誌論文]2012

    • 著者名/発表者名
      Nishi M, Aoyama F, Kisa F, Zhu H, Sun M, Lin P, Ohta H, Van B, Yamamoto S, Kakizawa S, Sakai H, Ma J, Sawaguchi A, Takeshima H
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 33523-33532

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.370551

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Role of cholesterol in functional association between K+-Cl- cotransporter-3a and Na+,K+-ATPase.2012

    • 著者名/発表者名
      Fujita K. et al.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 424巻 ページ: 136-140

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.06.089

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and biological activities of the 3,5-disubstituted indolizidine poison frog alkaloid 239Q and its congeners.2012

    • 著者名/発表者名
      Wang X. et al.
    • 雑誌名

      Eur. J. Org. Chem.

      巻: 36巻 ページ: 7082-7092

    • DOI

      10.1002/ejoc.201200974

    • 査読あり
  • [学会発表] ナトリウムポンプ阻害剤の抗癌作用における容積感受性外向き整流性アニオンチャネル(VSOR)の役割2013

    • 著者名/発表者名
      藤井 拓人
    • 学会等名
      日本薬学会第133回年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] ヒト大腸癌細胞のトロンボキサンA2誘導性細胞増殖におけるKv7.1 K+チャネルの役割2013

    • 著者名/発表者名
      清水 貴浩
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京都)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] Cl-/H+アンチポーターClC-5と胃プロトンポンプとの機能連関2013

    • 著者名/発表者名
      藤井 拓人
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京都)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] 温度上昇によるTRPP3チャネル機能の変化2013

    • 著者名/発表者名
      樋口 大河
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京都)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] TMEM16F はCa2+賦活化アニオンチャネルである2012

    • 著者名/発表者名
      清水 貴浩
    • 学会等名
      生理学研究所研究会
    • 発表場所
      自然科学研究機構(岡崎市)
    • 年月日
      20121130-20121201
  • [学会発表] マウス胃酸分泌細胞における細胞防御Cl-チャネルの分子実体の探索2012

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭輔
    • 学会等名
      生理学研究所研究会
    • 発表場所
      自然科学研究機構(岡崎市)
    • 年月日
      20121130-20121201
  • [学会発表] Transmembrane channel-like protein (TMC) 4の電気生理学的性質2012

    • 著者名/発表者名
      清水 貴浩
    • 学会等名
      第59回中部日本生理学会
    • 発表場所
      自然科学研究機構(岡崎市)
    • 年月日
      20121116-20121117
  • [学会発表] マウス胃酸分泌細胞におけるSLC26A7の機能2012

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭輔
    • 学会等名
      第59回中部日本生理学会
    • 発表場所
      自然科学研究機構(岡崎市)
    • 年月日
      20121116-20121117
  • [学会発表] 2Cl-/H+交換輸送体ClC-5と胃H+,K+-ATPaseの機能連関2012

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭輔
    • 学会等名
      第34回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      20121115-20121116
  • [学会発表] Association of ClC-5 Cl-/H+ exchanger with H+,K+-ATPase.2012

    • 著者名/発表者名
      Sakai H.
    • 学会等名
      The 3rd Symposium of the International Society for Proton Dynamics in Cancer (ISPDC)
    • 発表場所
      Kyoto Prefectural University of Medicine (Kyoto)
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] Association of non-pumping sodium pump with volume-sensitive outwardly rectifying anion channels in human cancer cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Fujii T.
    • 学会等名
      The 3rd Symposium of the International Society for Proton Dynamics in Cancer (ISPDC)
    • 発表場所
      Kyoto Prefectural University of Medicine (Kyoto)
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] Transporters associated with gastric proton pump.2012

    • 著者名/発表者名
      Sakai H.
    • 学会等名
      International Symposium on Epithelial Barrier and Transport 2012
    • 発表場所
      Ritsumeikan University (Shiga)
    • 年月日
      20120915-20120916
  • [学会発表] TMEM16F is an outwardly-rectifying Cl- channel with distinct Ca2+ dependency.2012

    • 著者名/発表者名
      Shimizu T.
    • 学会等名
      2012 International Ion Channel Conference
    • 発表場所
      The Shilla Hotel (Jeju, Korea)
    • 年月日
      20120824-20120827
  • [学会発表] 胃酸のCl-分泌実体としてのSLC26A9 の可能性

    • 著者名/発表者名
      二谷 章大
    • 学会等名
      日本薬学会北陸支部第124回例会
    • 発表場所
      富山大学(富山市)
  • [学会発表] TMC4 チャネルの電気生理学的解析

    • 著者名/発表者名
      江口 悠樹
    • 学会等名
      日本薬学会北陸支部第124回例会
    • 発表場所
      富山大学(富山市)
  • [学会発表] がん細胞の細胞内ナトリウムポンプの機能と増殖制御

    • 著者名/発表者名
      酒井 秀紀
    • 学会等名
      第22回細胞電気薬理研究会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
    • 招待講演
  • [図書] 疾病と病態生理2012

    • 著者名/発表者名
      酒井 秀紀
    • 総ページ数
      39-55
    • 出版者
      南江堂

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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