未知なる細胞容積感受性アニオンチャネルの分子構造基盤の解明

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24659095
• 研究機関: 富山大学
• 研究代表者: 酒井 秀紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60242509)
• 研究分担者: 清水 貴浩 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40353437)
• キーワード: 生理学 / 細胞・組織 / 蛋白質 / イオンチャネル / 細胞容積 / 浸透圧

研究概要

細胞容積感受性アニオンチャネル（VSOR）の分子実体の解明を目的とした研究を行い、以下の成果を得た。
1. 前年度の研究で候補タンパク質として見出したVC-1（仮称）の関連タンパク質であるVC-2およびVC-3の細胞容積調節機構への関与を検討した。KB細胞において、RNAi法によりVC-1、VC-2、VC-3をそれぞれノックダウンし、低浸透圧誘発性アニオン電流（VSOR電流）をホールセルパッチクランプ法により測定した。VC-1ノックダウン細胞においては再現性良くVSOR電流の顕著な減少が観察されたが、VC-2およびVC-3ノックダウン細胞では、VSOR電流は変化しなかった。
2. VC-1ノックアウトマウスの胎児から単離した線維芽細胞に、パッチクランプ法を適用しVSOR電流を測定したところ、野生型マウス胎児の線維芽細胞と比較して顕著にVSOR電流が減少することを見出した。VC-1ノックアウトマウス細胞におけるVC-2およびVC-3の発現量は野生型マウス細胞と比べ有意な差はなかった。
3. これまでに細胞膨張時において、VC-1が細胞外へATPを放出する機能を有することが知られていることから、KB細胞のVSOR活性化機構に対する細胞外ATPの効果をパッチクランプ法により検討した。細胞外にATP（100 microM）あるいはapyrase（1 U/ml）を適用しても、VSOR電流の活性化に有意な変化は観察されなかった。
4. 免疫細胞染色により、KB細胞におけるVC-1の局在を検討したところ、VC-1は原形質膜および細胞内オルガネラに存在し、その量は細胞内の方が多いことがわかった。以上、1～４の結果から、VC-1がVSORの分子実体（構成サブユニット）もしくは調節タンパク質として機能していることが強く示唆された。またVC-1は細胞内にプールがあり、刺激により原形質膜に移行する可能性が示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Functional coupling of chloride-proton exchanger ClC-5 to gastric H+, K+-ATPase. (2014)
  • 著者名/発表者名: Takahashi Y, Fujii T, Fujita K, Shimizu T, Higuchi T, Tabuchi Y, Sakamoto H, Naito I, Manabe K, Uchida S, Sasaki S, Ikari A, Tsukada K, Sakai H.
  • 雑誌名: Biol. Open 巻: 3 ページ: 12-21
  • DOI: 10.1242/bio.20136205.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Up-regulation of Kv7.1 channels in thromboxane A2-induced colonic cancer cell proliferation. (2014)
  • 著者名/発表者名: Shimizu T, Fujii T, Takahashi Y, Takahashi Y, Suzuki T, Ukai M, Tauchi K, Horikawa N, Tsukada K, Sakai H.
  • 雑誌名: Pflugers Arch. 巻: 466 ページ: 541-548
  • DOI: 10.1007/s00424-013-1341-x.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Modulation of H+,K+-ATPase activity by the molecular chaperone ERp57 highly expressed in gastric parietal cells. (2013)
  • 著者名/発表者名: Fujii T, Awaka SY, Takahashi Y, Fujita K, Tsuji H, Shimizu T, Gomi T, Tsukada K, Sakai H.
  • 雑誌名: FEBS Lett. 巻: 587 ページ: 3898-3905
  • DOI: 10.1016/j.febslet.2013.10.030.
  • 査読あり
• [学会発表] 胃壁細胞におけるERp57の機能 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、阿波加隼也、清水貴浩、塚田一博、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会第134年会
  • 発表場所: 熊本市総合体育館（熊本県熊本市）
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] 消化器がん細胞におけるポンプとチャネル機能の異常 (2014)
  • 著者名/発表者名: 酒井秀紀、藤井拓人、清水貴浩、塚田一博
  • 学会等名: 日本薬学会第134年会一般シンポジウム「生体防御のフロントライン：上皮膜バリアの病態生理機能研究の新展開」
  • 発表場所: 鶴屋百貨店東館（熊本県熊本市）
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] TMEM16F はCa2+-activated Cl- channel として機能する (2014)
  • 著者名/発表者名: 清水貴浩、家原貴大、佐藤かお里、藤井拓人、岡田泰伸、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会第134年会一般シンポジウム「腎および肺疾患の標的としての上皮イオンチャネル研究の最前線」
  • 発表場所: 熊本大学黒髪キャンパス（熊本県熊本市）
  • 年月日: 20140327-20140330
• [学会発表] 細胞膜マイクロドメインにおけるNa,K-ATPase の機能調節機構 (2014)
  • 著者名/発表者名: 酒井秀紀、藤井拓人、清水貴浩
  • 学会等名: 第91回日本生理学会大会シンポジウム「上皮膜の階層的機能形態研究の新展開」
  • 発表場所: 鹿児島大学郡元キャンパス（鹿児島県鹿児島市）
  • 年月日: 20140316-20140318
• [学会発表] TMEM16F はCa2+ 活性化型アニオンチャネルを形成する (2014)
  • 著者名/発表者名: 清水貴浩、家原貴大、藤井拓人、岡田泰伸、酒井秀紀
  • 学会等名: 第91回日本生理学会大会
  • 発表場所: 鹿児島大学郡元キャンパス（鹿児島県鹿児島市）
  • 年月日: 20140316-20140318
• [学会発表] TRPP3 チャネルの電位依存性不活性化に関与する分子構造基盤 (2014)
  • 著者名/発表者名: 樋口大河、清水貴浩、藤井拓人、Nilius Bernd、酒井秀紀
  • 学会等名: 第91回日本生理学会大会
  • 発表場所: 鹿児島大学郡元キャンパス（鹿児島県鹿児島市）
  • 年月日: 20140316-20140318
• [学会発表] ERp57 によるシャペロン機能非依存的な胃H+, K+-ATPase の活性化 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、阿波加隼也、清水貴浩、塚田一博、酒井秀紀
  • 学会等名: 第91回日本生理学会大会
  • 発表場所: 鹿児島大学郡元キャンパス（鹿児島県鹿児島市）
  • 年月日: 20140316-20140318
• [学会発表] ウアバインによる癌細胞増殖抑制の早期シグナルとしての容積感受性アニオンチャネル活性化 (2013)
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、舩山佳佑、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 第35回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
  • 発表場所: 東京大学大学院薬学系研究科総合研究棟（東京都文京区）
  • 年月日: 20131121-20131122
• [学会発表] 温度上昇によるTRPP3チャネルのゲーディング解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 樋口大河、清水貴浩、藤井拓人、Nilius Bernd、酒井秀紀
  • 学会等名: 第60回中部日本生理学会大会
  • 発表場所: 岐阜大学医学部記念会館ホール(岐阜県岐阜市）
  • 年月日: 20131025-20131026
• [学会発表] 酪酸誘導性細胞死における容積感受性Cl-チャネルの役割 (2013)
  • 著者名/発表者名: 清水貴浩、大竹宏尚、藤井拓人、田渕圭章、酒井秀紀
  • 学会等名: 第60回中部日本生理学会大会
  • 発表場所: 岐阜大学医学部記念会館ホール(岐阜県岐阜市）
  • 年月日: 20131025-20131026
• [学会発表] 受容体型ナトリウムポンプと容積感受性アニオンチャネルの機能連関による癌細胞増殖制御メカニズム (2013)
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、舩山佳佑、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 2013年度生理学研究所研究会「上皮膜輸送の多層的コントロールによる生体の恒常性維持機構」
  • 発表場所: 自然科学研究機構 生理学研究所（愛知県岡崎市）
  • 年月日: 20130826-20130827
• [学会発表] 癌細胞における非イオン輸送型Na+,K+-ATPaseと容積感受性外向き整流性アニオンチャネルVSORとの機能連関 (2013)
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、舩山佳佑、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 第8回トランスポーター研究会年会
  • 発表場所: 熊本大学薬学部（熊本県熊本市）
  • 年月日: 20130615-20130616
• [学会発表] 低濃度ウアバインによる癌細胞増殖抑制機構の解明
  • 著者名/発表者名: 舩山佳佑、藤井拓人、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第125回例会
  • 発表場所: 北陸大学薬学キャンパス（石川県金沢市）
• [学会発表] アクチンフィラメント構造による容積感受性Cl-チャネルの機能制御
  • 著者名/発表者名: 大竹宏尚、清水貴浩、藤井拓人、尾野純也、岡田泰伸、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第125回例会
  • 発表場所: 北陸大学薬学キャンパス（石川県金沢市）
• [学会発表] 2回膜貫通型Brain-Liver-Intestine Na+チャネルの機能解析
  • 著者名/発表者名: 伊藤知洋、清水貴浩、藤井拓人、Lingueglia Eric、Lazdunski Michel、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第125回例会
  • 発表場所: 北陸大学薬学キャンパス（石川県金沢市）
• [学会発表] 胃プロトンポンプ活性に対するCl-チャネル阻害剤の効果
  • 著者名/発表者名: 齋藤知里、藤井拓人、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第125回例会
  • 発表場所: 北陸大学薬学キャンパス（石川県金沢市）
• [学会発表] 機械刺激応答に関与する細胞内Ca2+ストア
  • 著者名/発表者名: 洞口拓也、藤井拓人、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 日本薬学会北陸支部第125回例会
  • 発表場所: 北陸大学薬学キャンパス（石川県金沢市）
• [学会発表] 強心配糖体による癌細胞特異的な細胞増殖抑制機構
  • 著者名/発表者名: 藤井拓人、舩山佳佑、清水貴浩、酒井秀紀
  • 学会等名: 生体制御・創薬研究ワークショップin鹿児島
  • 発表場所: プラザNヴァリエホール（鹿児島県鹿児島市）
• [備考] 富山大学大学院医学薬学研究部薬物生理学研究室
  • URL: http://www.pha.u-toyama.ac.jp/phaphy1/index-j.html