研究課題
新しい膜系の開発において最も重要で基本的な過程である1枚膜脂質2重層を全く新しい方法によって作成し、チャネルなどを再構成して単一および巨視的チャネル電流を測定することに成功した。さらに今後重要になってくる溶液灌流も新しい方法を開発することに成功し、数10ミリ秒で一方の溶液置換が可能となった。これらの方法の確立により行った実験によって膜の外葉・内葉の脂質組成を独立にコントロールした膜を形成し、それによってチャネルの活性が内葉の酸性リン脂質によって制御されることを明らかにすることができた。この分子機構がチャネル蛋白質の正電荷のアミノ酸残基によることを特定し、新しいゲート制御機構を提唱した。さらに急速灌流によりチャネル機能のゲーティングに関する実験を進めることができた。
2: おおむね順調に進展している
一枚膜に関する方法論はすでに確立し再現性も極めて高い。灌流装置も完成し、様々な実験条件に対応することができる。また一方ポンプ蛋白質の巨視的電流実験も始めたい。今後、2枚膜の形成方法を試みたい。その際、2本電極を設置するための方法を工夫する必要がある。
1枚膜から2枚膜への進展は技術的に大きな問題はなく、十分成功率が高いものと期待できる。今後さらに多様なリン脂質組成での膜形成能を検討していく必要がある。電解質水滴を3連にした2電極システムの確立に向けて、様々な可能性を試みたい。
リン脂質の組成により相分離などの温度依存性が変化し、膜物性が変化していることを示唆するデータがでつつある。これらの課題を系統的に脂質組成を変化させて実験を進める。またポンプ蛋白質としていくつかの候補が絞れてきたので、これらの巨視的電流の測定を開始したい。ここでも課題となるのが大量に同一の向きに膜に再構成できるか、というものであるが、いくつかの手掛かりを得ており、これらの系統的な実験も進めたい。これらの成果をメジャーなジャーナルに投稿し、発信したい。
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