原発性アルドステロン症の原因の一つとして、KチャネルのKイオン選択性の消失であることが明らかにされた。特定のイオンだけを通し、それ以外のイオンは通さない機能はイオンチャネルの根本的機能保一つである。疾患に対する根本的治療を含む新たな方法の探索のためにもKイオンの選択性に関する基礎的研究は不可欠である。X線結晶構造解析等の研究が進められてきているが、未だ明らかなメカニズムの解明に至っていない。本研究では、代表的なKチャネルであるKcsAチャネルを使用し、脂質平面膜法で単一イオンチャネル電流を計測する電気生理学的実験を行い、メカニズムの解明に挑んだ。 KcsAチャネルのうち、不活性化が起こらないE71A変異型を用いた。電解質は、KイオンおよびKイオンよりも直径の小さなイオンであるNaイオンとLiイオンを用いた。人工的に作成した脂質二重膜に単一Kチャネル分子を組み込み、Kイオン電流に対するNaイオンとLiイオンのKチャネルへの通りやすさとKイオン電流に対する影響を調べた。 まず、E71A変異型チャネルにKイオン電流が計測されることを確認した。次にNaイオンまたはLiイオンを流れるように電位をかけたが、これらの電流を直接計測することはできなかった。この後再びKイオンを流すよう電位をかけたが、Kイオン電流をすぐに観測することはできず、流れ始めるまでに時間が必要だった。このことから、NaイオンとLiイオンはKチャネルの中に入り込むことができるが、Kイオンの様にチャネルを通り抜けることはできず、チャネル内に留まることが示唆された。チャネル内にKイオン以外のイオンが留まっているため、Kイオンの流れをブロックしてしまうというメカニズムである。 さらに、NaイオンとLiイオンでは、Naイオンの方がKチャネル内に入り込みやすく、抜け出しやすいことが明らかになった。
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