研究課題/領域番号 |
24659098
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大橋 俊夫 信州大学, 医学部, 教授 (80020832)
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研究分担者 |
河合 佳子 信州大学, 医学部, 准教授 (10362112)
永井 崇 信州大学, 医学部, 助教 (50514353)
安嶋 久美子 信州大学, 医学部, 助教 (70584051)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 病態生理 / センチネルリンパ節 / 微小環境 / 癌転移 |
研究概要 |
2005年に特許出願(特許2005-19853)したヒトリンパ管内皮細胞株と市販されているヒト胃癌細胞株を用いて、分子生物学的、分子遺伝学的研究を行い、微小癌転移モデル実験でリンパ管内皮細胞表面に特異的に発現する分子マーカーを体系的に解析した。また、生体顕微鏡システムを用いて、市販されているヒト腫瘍細胞株あるいは腫瘍細胞分泌物質を用いてセンチネルリンパ節の微小癌転移モデル実験を行い、センチネルリンパ節における微小癌転移成立時にそのリンパ節内に生ずる内部環境の変化を分子マーカーの出現、リンパ液内のケモカイン、サイトカインの量的変化、リンパ内圧、リンパ流量、リンパ酸素分圧変化等の指標を用いて体系的に解析した。 その結果、高転移株の腫瘍細胞により分泌されるATPやケモカインの一つであるCCL2等によってセンチネルリンパ節に微小癌転移が成立する直前に、リンパ管内皮細胞に接着因子ICAM-1が特異的にしかも48時間以上長時間にわたって強く発現することを見出した。 すなわち、エーテル麻酔を施行したWistar 系ラットおよびDDY マウスを用いて、尾 部付け根に癌細胞培養上清、ATP (10-8M~10-6M)、CCL2 (100~300ng/mL)、各種リンパ管新生刺激因子(VEGF-C・CXCL12 等)を皮下投与し、18 時間待機する。翌日、ネンブタール腹腔内投与により麻酔した後、尾部付け根からアルブミン含有エバンスブルー色素を注入し、リンパ節が濃染するのを確認した後摘出し、薄切標本を作製して、ICAM-1 を含む接着分子の発現変化を検討した結果、外因性ATP投与群で所属リンパ節に多量のICAM-1が発現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、センチネルリンパ節内に微小癌転移を成立させるリンパ節内の微小環境の変化を分子生物学的レベルで解明できた。さらにマウスの腸管リンパ節の蛍光顕微鏡を用いた可視化実験で、微小癌転移の分子イメージングも可能となる実験成果を収め、平成25年度の実験計画を進めるための基礎データをほとんど取得できた状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
24年度と同様のヒトリンパ管内皮細胞株ならびにラット、マウス等の実験動物を用いて、ケモカイン、サイトカイン刺激によるリンパ節内の微小環境変化を免疫染色にて解析する。具体的には、Wistar系ラットおよびDDYマウスを用いて、エーテル麻酔を施行したうえで、尾部付け根に癌細胞培養上清、ATP (10-8M~10-6M)、CCL2 (100~300ng/mL)、各種リンパ管新生刺激因子(VEGF-C・CXCL12等)を皮下投与し、18時間待機する。翌日、ネンブタール腹腔内投与により麻酔した後、尾部付け根からアルブミン含有エバンスブルー色素を注入し、リンパ節が濃染するのを確認した後、摘出し、薄切標本を作製して、ICAM-1を含む接着分子の発現変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は当初計画時よりも研究用消耗品が安価で購入できたため、未使用額が生じた。次年度の請求額と合わせ、センチネルリンパ節微小環境変化を可視化する実験ための実験動物(マウス、ラット等)、ICAM-1等分子マーカー抗体、研究用消耗品費用のほか、研究成果の発表等に必要な旅費、論文投稿料に使用する。
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