前年度の解析にて、ユビキチン(Ub)のC末端Gly残基をVal残基へと置換した変異体Ub(Ub G76V)を3分子と野生型Ub 1分子からなる融合タンパク質(x3Ub(G76V)-Ub)を大腸菌発現系にて発現させ、Native chemical ligationによって蛍光基4-aminomethylcoumarin(AMC)を結合させたx3Ub(G76V)-Ub-AMCを作製し、これがEndo型脱ユビキチン化酵素(DUB)の活性測定用基質として機能することを明らかにした。本年度は、x3Ub(G76V)-Ub-AMC基質を用いて、ヒト二倍体線維芽細胞培養細胞株IMR90細胞とヒト繊維肉腫細胞株HT1080細胞のEndo型DUB活性を比較解析した。その結果、各細胞から調製した細胞抽出液のMonoQカラム分離後の各画分におけるx3Ub(G76V)-Ub-AMC分解活性のプロファイルは互いに大きく異なっており、IMR90細胞では2つのピークからなるプロファイルが得られたのに対して、HT1080細胞では3つのピークが得られ、さらにいずれの画分でもIMR90に比べて高い活性を示した。これらの結果は、Endo型DUB活性ががん細胞の悪性化に何らかの役割を果たしていることを示唆している。 マクロファージが産生し、炎症反応の惹起に深く関わるサイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)で刺激した細胞におけるEndo型DUB活性の変化も解析した。その結果、予想に反して、HT1080細胞におけるEndo型DUB活性はTNF刺激によって低下することを見出し、本活性が炎症反応に対して負の制御を行っている可能性を見出した。 現在、上記の解析にて見出したHT1080細胞のx3Ub(G76V)-Ub-AMC分解活性画分に含まれるEndo型DUBを同定するため、Activity-based probeを用いた解析を進めている。
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