研究課題
[研究目的]新規実験系「三次元多層細胞」を構築して動脈硬化の病態を解明し、効果的な治療の基礎を確立することを目的とする。[実験手法]三次元積層体の構築:ウィスターラットの新生仔の大動脈から単離した血管平滑筋細胞を用いた。フィブロネクチンとゼラチンの細胞表面の薄膜形成により7層の三次元血管モデルを構築した。10%もしくは1%のFBSを含有したDMEM, DMEM/F-12を用い、培地条件が弾性線維の形成に与える影響を検討した。弾性線維の染色・定量:エラスチカ・ワンギーソン染色を行い、ソフトウェアを用いて、輝度抽出により定量した。また、既存の三次元細胞培養としてスフェロイドを平滑筋細胞で作成し、弾性線維や平滑筋の分化の評価を行った。さらに、三次元平滑筋細胞積層体にマクロファージに分化させた単球系細胞株を共培養して、マクロファージの平滑筋細胞体への影響を検討した。[結果]培養液の検討と弾性線維の形成:DMEM/F-12 により培養された三次元血管モデルでは7層の構造が形成されなかった。一方、DMEMにより培養されたものでは7層の積層構造と弾性線維の形成が確認された。1%のFBSの条件では10%と比較し、弾性線維の形成が有意に増加した。1%の条件では、弾性線維の構成分子のうちelastinとfibrillin-2のmRNA発現が有意に高かった。平滑筋形質マーカーの発現:単層の細胞と比較し、三次元血管モデルにおいては収縮型の平滑筋マーカーであるSM1のタンパク発現が有意に多く、合成型のマーカーであるSMembの発現が少なかった。また、三次元平滑筋細胞積層体にマクロファージが浸潤し弾性線維を分解していることを、免疫染色でとらえることができた。[結論]弾性線維を含有する三次元平滑筋細胞体を作製することができた。この三次元血管モデルは血管疾患解明の新たなツールとなることが期待される。
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