研究課題/領域番号 |
24659104
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石毛 和紀 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20597918)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10312852)
宇都宮 洋才 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60264876)
後藤 直宏 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (60323854)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肥満関連肝疾患 / 骨格筋 / 代謝機能 / 運動機能 / 転写因子 |
研究概要 |
わが国において増加の一途にある非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の予防と治療には,食事・運動療法以外にコンセンサスが得られた方法はない.しかしながら,運動療法がNAFLDに対して有用であることの分子メカニズムは未だ解明されていない.本研究では,運動が転写因子Nrf2の賦活化により抗酸化ストレス応答を発揮し,炎症病態と酸化ストレスレベルの軽減により,NAFLDの予防と治療に有用であるとの仮説のもとに実験を進捗させた. 中年肥満男性に対して施行した減量のための運動療法では,介入前後において,エネルギー消費量,VO2 max,adiponectinの増加,体重,腹部脂肪面積,体脂肪率,HOMA-IR,AST,ALT,ヒアルロン酸,フェリチン,TBARS,高感度CRP,Leptinの減少が認められた.また,末梢血白血球における各Nrf2標的分子の遺伝子発現を定量した結果,異物代謝酵素NQO1, 抗酸化分子; HO-1,鉄代謝因子; Fpn1の増加,炎症因子; COX2の減少が認められ,運動による転写因子Nrf2の賦活化が誘導されること,さらに,それに関連した糖および脂肪の代謝機能の向上が誘導されるものと推測された. 一方,動物実験においても,高脂肪食の負荷にて作製した脂肪肝が,約2ヶ月間の野生マウスでは運動により改善するが,Nrf2欠失マウスでは改善しないことが判明している.運動は全身の転写因子Nrf2を活性化し,さらに,骨格筋はNrf2介在性に各種分泌蛋白を産生し,それらの一部の分泌蛋白には,異所性臓器脂肪に対する脂肪融解作用があるものと推測されるが,未だ同定には至っていない.今後,本所見はNAFLDに関する運動療法のエビデンスを築いていく上で重要な研究成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
運動が転写因子Nrf2を活性化し,抗酸化ストレス応答を発揮し,炎症病態と酸化ストレスレベルを改善することが判明し論文投稿中である.動物実験については,トレッドミルテストを行い最大走行距離の測定にて,薬剤によるNrf2の活性化が運動耐容能力を増大させることが判明したが,未だ背景に存在する詳細なメカニズムは解明出来ていない.
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今後の研究の推進方策 |
運動療法が中年肥満男性において,転写因子Nrf2を活性化し,抗酸化ストレス応答を発揮し,炎症病態と酸化ストレスレベルを改善することが判明した.一方,動物実験においては,高脂肪食にて作製した脂肪肝が野生マウスでは長期間のトレッドミル運動により改善するが,一方,Nrf2欠失マウスでは消失しないことが判明している.今年度は,Nrf2介在性に生成される骨格筋由来の新規分子について探索研究を進めていく.さらに,新規分子の生理作用についても解析を加える.
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次年度の研究費の使用計画 |
Nrf2介在性に骨格筋細胞で産生されるマイオカインなどの新規分子について,トレッドミルテストを施行したマウスについて,あるいは培養骨格筋細胞について細胞ストレッチ装置を用いて,筋細胞の収縮を反復させる.トレッドミルテスト前後のマウス血液と骨格筋,あるいは培養上清と 細胞ペレットを用いて,網羅的遺伝子解析とプロテオーム解析を行い,新規分子の同定を行う.さらに,新規分子の生理作用についても解析を加える.
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