私たちの研究の目的は、1) 解析モデルとして子宮ガン由来の細胞株であるHeLa細胞に発現している遺伝子を次世代シークエンサーで解析し、発現しているシグナル伝達因子を明らかにする。2) 発現しているシグナル伝達因子に対するRNAiライブラリーを作製し、細胞インピーダンス法を用いてE2刺激後の早期細胞応答を調べる。3) 細胞応答に関与したシグナル伝達因子についてIPAパスウエイ解析ソフトを駆使してシグナル経路を明らかにする。4) 正常な子宮平滑筋を用いてHeLa細胞で解析したシステムと同様の解析を行い、正常細胞におけるエストロゲンシグナル経路の解析を行う。5) 遺伝子解析データをコンピューターシステム上で解析し、正常とガン細胞の応答変化を解明することである。 今年度、私たちはアッセイプレートをデータが不安定な384プレートから96ウエルプレートに変更し、乳癌細胞にRNAiを挿入する条件検討を行った。その結果、蛍光ラベルしたRNAiは、リポフェクション法を用いて90%以上の割合で細胞に導入することが可能になった。この細胞を用いてエストロゲン刺激によって細胞増殖が有意に増加する条件を検討した。細胞増殖は、生細胞(赤)と死細胞(緑)に染色する蛍光試薬を用いて精度良く活性ミトコンドリア膜電位を測定する手法を確立した。さらにヘキストで核DNA量を測定し細胞数を補正することでエストロゲン刺激後、3日で数倍以上活性に差がある実験条件を確立した。この手法を用いて96wellプレート16枚を同時測定しシグナル経路に関与する全RNAiを細胞に導入し、細胞増殖が抑制されたウエルを測定した。しかし、大量の測定をしたためタイムラグが生じ、プレート測定に時間がかかり、前半と後半部分でのデータが合わず、データを解析するだけの精度を得ることができなかった。
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